「荒木くん! なになに? どうしたの急に……」
希先輩は、俺の見たことのない顔と声色で立ち上がった。
彼らのためにあたふたと席を用意すると、身を乗り出す。
「で、どういうこと?」
「実は、撮影を頼みたいんだ」
話しはこうだ。
演劇部の舞台を高校生コンクールに応募しようと動画撮影したものの、ただ舞台全体を三脚を置いて撮影しただけのものでは味気なく、サイト内視聴回数も伸びが悪い。
しかし演劇部部員だけで撮影と動画の編集までするには、人員も足りないしパソコン等の機材もない。
映画研究部のないうちの学校において、お願いできるのは写真部しかないのではないか……とのことだった。
「照明とかにも人数取られちゃって。どうか頼めないかな。困ってるんだ。もしよかったら、写真部の撮影会モデルとして、うちの部員も協力できることはさせてもらうから……」
「え? モデル引き受けてくれるの?」
部員たちは顔を見合わせる。
俺はずっと妖怪か幽霊に憑依されたままであろう舞香のことばかりチラチラと見ていて、ずっとそれどころではなかった。
この瞬間になって初めて、イケメン荒木部長と、ふと目が合った。
「キミの名前は?」
「い、岩淵圭吾です」
「圭吾はどう思う? 頼めないかな」
「う~ん。写真部ってあくまで静止画専門であって、動画の撮影や編集はやってないので……」
「でも、やろうと思えば出来るよね。てゆーか、やってるよね」
舞香だ。
何者かに取り憑かれたであろう舞香が、そう言った。
四角く長机を並べた席の端っこで、肩までの髪を揺らしている。
その彼女と目が合った。
俺は反射的に立ち上がる。
「だ、だけど、うちにもそんな余裕があるわけじゃないし、動画の編集作業ってものすごく時間がかかるので……」
「じゃあさ、その編集作業の仕方だけでもいいから、教えてもらえないかな」
舞香の視線に、ぐっと押し黙る。
本当は別に嫌じゃない。
嫌じゃないけど、今のこの正体不明な彼女ではイヤだ。
怖い。
無意識に立ち上がってしまった俺は、集まる視線をかわそうとパソコンに向かった。
俺はいま忙しいんだ。
だからそんな話しは出来ませんよアピールのつもり。
希先輩は、俺の見たことのない顔と声色で立ち上がった。
彼らのためにあたふたと席を用意すると、身を乗り出す。
「で、どういうこと?」
「実は、撮影を頼みたいんだ」
話しはこうだ。
演劇部の舞台を高校生コンクールに応募しようと動画撮影したものの、ただ舞台全体を三脚を置いて撮影しただけのものでは味気なく、サイト内視聴回数も伸びが悪い。
しかし演劇部部員だけで撮影と動画の編集までするには、人員も足りないしパソコン等の機材もない。
映画研究部のないうちの学校において、お願いできるのは写真部しかないのではないか……とのことだった。
「照明とかにも人数取られちゃって。どうか頼めないかな。困ってるんだ。もしよかったら、写真部の撮影会モデルとして、うちの部員も協力できることはさせてもらうから……」
「え? モデル引き受けてくれるの?」
部員たちは顔を見合わせる。
俺はずっと妖怪か幽霊に憑依されたままであろう舞香のことばかりチラチラと見ていて、ずっとそれどころではなかった。
この瞬間になって初めて、イケメン荒木部長と、ふと目が合った。
「キミの名前は?」
「い、岩淵圭吾です」
「圭吾はどう思う? 頼めないかな」
「う~ん。写真部ってあくまで静止画専門であって、動画の撮影や編集はやってないので……」
「でも、やろうと思えば出来るよね。てゆーか、やってるよね」
舞香だ。
何者かに取り憑かれたであろう舞香が、そう言った。
四角く長机を並べた席の端っこで、肩までの髪を揺らしている。
その彼女と目が合った。
俺は反射的に立ち上がる。
「だ、だけど、うちにもそんな余裕があるわけじゃないし、動画の編集作業ってものすごく時間がかかるので……」
「じゃあさ、その編集作業の仕方だけでもいいから、教えてもらえないかな」
舞香の視線に、ぐっと押し黙る。
本当は別に嫌じゃない。
嫌じゃないけど、今のこの正体不明な彼女ではイヤだ。
怖い。
無意識に立ち上がってしまった俺は、集まる視線をかわそうとパソコンに向かった。
俺はいま忙しいんだ。
だからそんな話しは出来ませんよアピールのつもり。