最近悪口、陰口に悩んでいる。グループ戦争が激しくなってきて悪口陰口を言われている。女子2人と男子3人の合計5人のグループに言われている。その子たちは最近一軍になった子達ですごく怖い。すごく悔しいことがひとつある。それは男子3人の中に光雪がいるということだ。完全にやられた。光雪のこと信じてたのに。
「雪音ー。お前下ネタ好きなんでしょ」
「お前の推し下ネタばっかじゃん」
「きも」
と男子たちに直接言われることもあった。でも私は『顔が好きなだけ。裏垢なんて見てない』と何回も言った。でも裏垢も実は見ている。下ネタが好きとかじゃなくて顔が好きということに間違いはない。裏垢見てないというのは嘘だけど下ネタが好きな訳では無い。このことをどう伝えればいいのか分からないからいつも『顔が好きなだけ。裏垢は見てない』と言ってしまう。
柚と一緒にいても陰口が聞こえる5人でコソコソ話している。ほんとにムカつく。なんなの?本人の前では怖がって言えないくせにコソコソ話して何が楽しいの?光雪がそんなことするなんて思ってなかった。悪口陰口よりも光雪が裏切ったことが信じられない。好きにならなくて良かった。
家に帰ってからママに
「光雪くんと最近どう?」
と聞かれた。どうしてそんな質問してくるのか分からない。出来れば光雪のことなんて考えたくない。でも何か聞いてくる理由があるはずだ。
「結構仲良かったのに最近悪口言ってるグループにいてそのグループが私のこと言ってるんだよね」
「大丈夫なの?」
大丈夫か聞かれたってよく分からない。悪口や陰口自体は気にしてないけど光雪に裏切られたことが悔しい。ムカつく。
「大丈夫。悪口とか言っとけって感じ」
「そっか。なら良かった。」
心配してくれてたのは嬉しかったけどなんだかママの様子が変だ。なぜか落ち着きがない。何か考え事をしているように見える。
「ママ、どーしたの?なんか変だよ」
「別になんもないよ」
『別になんもない』絶対嘘に決まってる。気になるけどママは賢い。私のすることだってわかっているはずだ。だから探ったりすることは出来ない。でもすごく気になる。今もママはソワソワしながら私の方を見ている。
とりあえず自分の部屋に戻って寝ることにした。何か気になる事があるとその事しか考えられなくなってしまうから止まらなくなる前に寝る。寝たら大体のことなんか忘れてるはずだから。光雪に裏切られたことも忘れられたらいいのにな。

朝、少し寝坊してしまった。学校に行ったら光雪たちのグループに悪口を言われる。最初の頃はそんなこと気にしてる暇ないと思っていたけど少しは気になる。悪口をいって何が楽しいのかがほんとに気になる。誰も得しないのに。そんなことを考えながら歩いていると学校に着いた。光雪達はまだ来ていなかったけど柚がいた。
「おはよぉー!雪音寝坊したでしょー」
「おはよ!そーなの。寝坊しちゃったの」
柚子がくすくすと笑っている。その笑顔がすごく愛おしい。
「雪音最近変じゃない?どーしたの?」
突然の質問にびっくりした。変だよなんて言われても返す言葉がない。自分では何も変わって感じはしないけど多分光雪のことで動揺しているんだろう。柚がすごく不安そうな顔でこっちを見ている。ますますなんて返せばいいのかわからなくなった。
「ねえ、雪音やっぱり変だよ。」
柚が私の頭から足までを順番に見て行ったけど何も分からなかったらしい。そりゃそうだ。光雪のことで傷ついたのが見てわかるわけない。柚は真剣な目をしていた。だからちゃんと言わなきゃ。柚にはなんでも言える気がした。
「光雪のこと好きになりかけてた。だけど裏切られてどうしたらいいのかわかんなくなっちゃって」
柚が強く頷いた。
「そっか。絶対悪口言うようなやつ好きになんないでね。好きになる前で良かった。」
すごく真剣に私の手を握ってそう言ってくれた。すごく励まされた。やっぱり親友の存在ってすごいと実感した。
「次移動教室だよ!行かないと」
「うん!」
私たちは何事も無かったかのように歩いていった。
「あっ、」
そうだ。大事なことを忘れていた。美術の授業は光雪と席が隣なんだ。最悪だ。光雪は私とは真反対に美術がすごく得意だから私の作品を見てどうせまたいつもの人達で悪口を言うんだろう。でもそんなの気にしない。
「あ、雪音」
光雪が何か言いたそうな顔をして話しかけてきた。
でも私は無視をした。最低なことしたのはわかっている。でも悪口言うようなやつなんかと話したくない。だから授業中みんなが喋っている中、一言も喋らなかった。

授業が終わって教室に戻った。休み時間、柚は委員会の呼び出しがあったから私はゆっくりとあの子のことについて考えることにした。
でも休み時間だけじゃ時間が足りなかった。いくら考えても全く分からない。
「雪音!ただいまー。委員会めんどかったんだけどー!」
柚がすごくぐったりしていた。
「お疲れ様ー!でも今日は次の授業終わったら帰れるよ!」
私がそう言うと柚はすごく喜んだ。次の授業は数学だった。
私は数学が苦手だったからやだったけど今日の授業は何となく簡単だった。頭いい人はいつもこんな感覚なのだろうかと考えていると授業が終わった。
帰る準備を終えて帰ろうと思った時、光雪に声をかけられた。
「雪音、」
私は無視して歩いていった。すると
「雪音、ゆき、ね」
何故かガッカリしたような声で私の名前を呼んだ。
まさか無視された事が嫌だったのか、そんなはずはない。
多分光雪は悪口を言って人を傷つけてる自覚がないんだ。ほんと最低。
こんな人を好きになりかけていた自分が嫌になる。
次の日もその次の日も『雪音』と光雪に話しかけられた。でも全て無視した。
ベットに入るとやっぱり光雪のことを考えてしまう。朝学校に行っても光雪のこと探しちゃう。でも好きなんかありえない。
ある日の朝、いつものように席に座って光雪のことを考えていた。光雪の周りにいる女の子たちが気になる。
光雪と一緒に悪口を言ってる女の子たちは多分光雪のことが好きなんだろう。
確かに光雪のこと私も好きになりかけた。光雪もその女の子たちが好きだと思う。
でも光雪の家を知らないし一緒にプリ撮ったことも無いはず。なら私のこと・・・なんて思ったけど絶対にありえない。それだけはわかる。好きになりかけた自分が情けない。
私に優しくしてくれてすごく仲良くなれて特別な存在だって自分で思ってたけど光雪からしたらきっとお遊びなんだ。
みんなに同じことをして女の子で遊んでいるんだ。光雪は最低だと考えていると勝手に口が動き出した。
「・・・す、き。」
自分でも分からない衝撃が走った。無意識に『好き』と口にしてしまった。
その後しばらく動けなかった。周りに誰もいなくて良かった。
こんなこと初めてだ。に口が動くなんてありえない。しかも光雪に対して「好き」と言ったことが自分でわかった。
女子にちょっと優しくして勘違いさせて裏で悪口を言うような最低人間に「好き」なんて言うはずない。でもさっきの「好き」は光雪に向けたものだった。
頭の中では1番嫌いなはずなのに。あんな最低人間好きなんてありえない。何かの間違いだ。私は好きになっちゃいけない。でもあの時あの瞬間、あの子のことだけ考えるって自分で約束した。だから絶対好きになっちゃいけない。
でも・・・光雪のこと考えちゃう。絶対好きじゃないはずなのに。

今日の授業が終わって帰ろうとしていたらクラスの男子に話しかけられた。
「雪音、光雪の噂知ってる?」
噂?そんなの知るわけない。光雪の噂なんて聞いたことない。でも少し気になった。
「知らない…教えて!」
「光雪、好きな人いるっぽいんだけど、どんなに仲いいヤツも知らないんだ。みんなで予想してるんだけどみんなもしかしたら雪音って」
「そーなんだ。でも光雪が私のこと好きになるとか絶対ないから」
笑いながらそう答えたけど頭の中では少し嬉しかった。私のこと忘れてないんだ。でもみんな『もしかしたら』って多分ないと思ってるんだ。別に光雪のこと好きなるわけない。
光雪に好きな人なんかいるんだ。女子のことおとして遊んでるだけだと思ってた。
「雪音ー!大丈夫!?」
「えっ、」
「さっきからずっと呼んでんのになんか考えてるから」
柚が心配そうにしている。
「大丈夫、ごめんねちょっと考え事してて聞こえなかったみたい」
「もー!ちゃんとしてよね!」
「ごめんごめん!帰ろ!」

家に着いてからあることが気になって調べてみた。私と光雪の目にある白く小さい模様の事だ。
『白雪病(しらゆきびょう)』と出てきた。日本人特有の病気でごくごくわずかの人しかかからないらしい。白い雪のような模様だということから白雪病と名ずけられた病気だ。『体に悪いことはないけど模様の数によって心の状態を表していて模様が多ければ多いほど心の状態が良くて少ないほど悪い』この文章を見てびっくりした。昔、あの時、模様が減ってすごく怖かったのを今でも覚えている。すごく幼かった私は夜『なんで模様減ったんだろう?死ぬのかな?』とずっと考えていて寝れなかった。夜はすごく長くて辛かった。もうこれ以上思い出したくない。
慌てて鏡を見る。模様がひとつ減っていた。でもひとつくらいなんともない。ただの誤差で1週間もしたらすぐに変化があるだろう。
心臓がバクバクしている。あの時のことを思い出してびっくりしたのだろう。
一ヶ月前に光雪と一緒に撮ったプリを見ると光雪の模様がすごく多い。こんなに光雪の目の模様は多くないはずだ。
明日、光雪の目を見てみることにした。
友達も多くて女子にも囲まれている光雪はきっと模様が多いだろう。そもそも『心の状態』というのはなんなのか分からなくなってしまった。でもきっと不安なことや悩み事がある時は『心の状態が悪い』と言うのだろう。

朝、学校に行くと光雪がいた。『目をみたい』心の中、体の中がその思いでいっぱいになったにも関わらず体は動いてくれなかった。頑張って足を動かしたけど足が自然と下がってしまった。一旦諦めてまた後で見てみることにした。
授業中に見てみようかと思ったけど席が離れすぎて見えなかった。
休み時間も光雪は友達に囲まれているから見えなかった。
そこから1週間、一ヶ月、光雪の目を見ようと頑張ったけど見れなかった。だからもう諦めた。そこまでしてまで見たいとは思わなかったからだ。
ベットの上で光雪と一緒に撮ったプリを見た。懐かしくて、騙されて本気で楽しんでいる私が憎くて、色んな感情が込み上げてきた。
『あの子、元気かな』
急にあの子のことを思い出した。
あの子は今何をしてるのか。あの子の顔が頭をよぎる。
いつ会えるのか。会えない気もしてきた。
でも絶対に会うって決めたからその気持ちを信じ続ける。それしか今の私には出来なかった。


光雪と口を聞かずに半年がたった。悪口は収まる気配がなく、光雪達のグループと私の間に何かが会った。それは深い深い谷のような大きなきれつだった。
近づきたいとも思わないしこれでいいと思う。光雪も私のことがきっと嫌いだ。お互いに嫌い同士なら近づかないのが1番だ。
でもあの裏切られた感覚はいつになっても忘れられない。あんなにたくさんの思い出を作ったのに悪口を言われていた。信用して推しを教えたのにそれを広めて遊んでいた。今まで生きてきた中で1番信じ難い事実だった。
悪口を言ってるのを見た瞬間からもう誰も信じられなくなった。
自分でも悲しかったのが柚を疑ってしまったことだ。大好きな親友を疑ってしまうほどショックだった。でも今は柚だけなら信用出来る。それとあの子。