今日は席替えがある。私のクラスは1ヶ月に1回に席替えがあるのだ。
「えー。もう雪音と別れちゃうのやだなー」
「私だってやだよ。また近くになるといいな」
光雪に言われたから適当に返したけど本当は少しだけ嬉しかった。光雪のこと考えなくていいんだ。あの子のことだけ考えられる。
出来れば柚の隣になりたいけどそんなの願わなかったって近くになる。何故かいつも近くになるのだ。今も斜め前の席は柚だ。私たちの中では運命ってことにしてある。
くじを引いた。まだ番号は見ずに手の中にしまって何度も光雪と少しは離れたいと願った。もしまた近くになってしまったら好きになってしまう。今も少し好きなのかもしれないけど好きになってはいけないと自分が1番わかっているはずだ。くじを見るとまぁまぁ後ろの方で結構いい席だった。机を移動してから光雪がどこになったのかを探す。光雪は結構遠くの方にいた。心の中で『良かった』と声がもれる。
「雪音ー!運命ってすごいね」
とニヤニヤしながら私の前に机を移動したのは柚だ。周りのクラスメイトから
「またあいつら近いじゃん」
「いいなー」
「普通にすごくね?」とたくさんの声が聞こえた柚と私は
「だって運命だもんね」
と口を揃える。私の隣を見るとあまり喋ったことの無いクラスメイトがいた。でもちゃんと発言とかする子だから良かった。
くじを回収に来た先生が
「雪音さんと柚さんはいつも近いねー」
と言ってきた。私と柚はいつもどうり
「運命ですから」
と先生に言った。先生はおかしそうに笑っていた。
休み時間。光雪が私のところに来た。
「雪音と結構離れちゃったー。残念。」
光雪はほんとに残念そうに言っていてなんだか不思議な気持ちになった。私は正直光雪と離れて嬉しかったけどそんなこと言えない。
「私も。残念」
嘘をついてはいけないのは知っているけどこのくらいの嘘はみんなついたことがあるはずだ。じゃないと相手が悲しんでしまう。授業中に話しかけてくる人はいないからずっとあの子のことだけを考えていた。いつか会いたい。

今から体操に行く。夏菜子と芽衣ちゃんに会えると思うと嬉しかった。
体操が始まっても夏菜子は来なかった。気になって先生に
「今日夏菜子こないのー?」
と聞いてみた。
「夏菜子骨折したんだって」
と先生が残念そうに言った。ほんとにびっくりした。
骨折すると治るまでに結構な時間がかかる。夏菜子が帰ってきたら夏菜子はきっと練習に追いつけない。大丈夫なのかな。芽衣ちゃんと夏菜子心配だねと何回も話した。
1週間後夏菜子が松葉杖をついて体操に来た。「大丈夫なの?」
「どーしたの?」
「なんでそうなったの?」
夏菜子がみんなから質問攻めにされた。何から答えればいいのか分からなそうで困りながらも夏菜子が言った。
「体育の授業でやっちゃって…体操辞めることになった」
何も声が出なかった。私は今まで夏菜子がいてくれたから頑張れた。なのに辞めてしまうなんて、涙が出そうになった。でも我慢した。
「雪音今までほんとにありがとね。」
「私の方こそ夏菜子今までありがとう。」
夏菜子が涙目で見つめてきながら深く私に頭を下げて手紙をくれた。
「これ、家帰ってから読んで欲しい。」
「うん。ありがと。家で読むね」
そして家に帰った。夏菜子がくれた手紙を読むと
『雪音へ
雪音より先に辞めちゃうなんてほんとごめんね。私は雪音が声掛けてくれてすごい嬉しかったよ。練習の時も雪音が励ましてくれて頑張れたよ。頑張れ、一緒にがんばろうって言ってくれたのがほんとに嬉しかった。雪音にとっては何気ない一言かもしれないけど私はその言葉に何回も救われたよ。本当にありがとう。雪音の方が年上だから大変なこと沢山あると思うけど雪音ならなんでも乗り越えれると思うよ。もし何かあったらなんでも私に言いに来てね。雪音が私の力になってくれたように私も雪音の力になるから。雪音は優しくて優しくてとにかく優しい。優しすぎるくらいだよ。私は雪音みたいになりたかったけど雪音が私のこと褒めてくれて少し自信ついたよ。長くなっちゃったけど最後にほんとにごめんね。そしてほんとにありがとう
夏菜子より』
と書いてあった。
家でこの手紙を読んで泣いてしまった。私は夏菜子がこんな風に思ってくれてるなんて思いもしなかった。私の方が夏菜子から励まされたこと沢山あるのに。でも私が少しでも夏菜子の力になれたなら良かった。
これからはこの手紙を読んでから体操に行こうと思った。私はこんなに素敵な手紙を貰えてすごくすごく幸せだ。