「あっ、ごめん」
初めてあった男の子にぶつかってしまった。「ごめん!大丈夫?」
すごく優しい声をしていた。私は少し頷いて自分の席に戻った。
私の名前は雪音(ゆきね)だ。
今日は席替えがある。ドキドキしながらくじを引き、移動したら1番後ろの席になった。それだけでも嬉しかったのに隣を見るとさっきの男の子が立っていた。
「さっきはごめん、雪音ちゃんだよね、雪音が隣でよかった!」
心臓がバクバクする。今名前呼んでくれたって考えると心が変な感じ。
「こちらこそよろしく!」
名前は光雪(みつゆき)くんらしい。
家に帰っても光雪くんのことしか考えられなかった。また光雪くんに会うのかと考えるとドキドキした。
光雪くんは喋る時に目を見てくれる。嬉しい。その目には私と同じように黒目の中に白く小さい模様がひとつある。それと、よく耳を触っている。
「雪音、今度遊べる日ない?」
突然の問いかけに驚いた。
「いつでも!」
何も考えずに答えてしまった。どうしてすぐに答えてしまったんだろう。
「じゃあ明日で!」
光雪くんはすごく大人しそうだけど話してみるとすごく元気だ。

洋服が決まらない。どうしよう、急がないといけないのに。てかなんで私こんなことしてんだろ。自分が何をしてるのか分からなくなった。結局いつもの服装で待ち合わせ場所に向かった。
すると光雪くんが周りをキョロキョロみて待っていた。急いで光雪くんのところに行った。
「っっ!え…」
光雪くんすごくかっこいい。心臓が揺れる。「おまたせ」
もっとほかに服かっこいいとか言えばよかったんだろうけどおまたせとしか言えなかった。
「行こっか、てか雪音耳赤いよ大丈夫?あつい?具合悪い?」
「え、ううん別に大丈夫たよ」
光雪くんがしゃがんで私の顔を覗いてきた。心臓がバクバクする。
「なら良かった」
光雪くんは少し笑ってから立ち上がった。
光雪くんの目を見ると余計耳が赤くなってしまうと思って下を向いてることにした。あんな美しい目を見て何も思わない人なんて居ないはずだ。どうしてあんなに美しいんだろう。なんでこんなに心臓が揺れるんだろう。そんなことを考えて歩いていると目的地に着いた。
「よーし!かっこいい顔で映んないとな!」「私も可愛い顔で映んないと!」
急いで答えたが頭の中が追いつかない。私とのプリにかっこいい顔で写ろうとしてくれてる、私は光雪くんのプリに可愛く写りたいといった、ほんとによくわかんない。最近何も考えずに話してしまう。そんなことを思っているととんでもない言葉が帰ってきた。
「雪音はもう可愛いじゃん」
とうとう心臓が止まるかと思った。可愛い?私が?あまりにびっくりしすぎてふらついてしまった。
「大丈夫?今ふらついてなかった?」
「全然!大丈夫だよ!てか光雪くんもかっこいいじゃん」
ふらついたのがバレた。どうしよ。それに光幸くんもかっこいいなんて言ってしまった。「とろとろ!」
光雪くんがはしゃいでいる。可愛い。
「まって!雪音可愛いんだけど!」
出てきたプリを見て私が可愛いと言った。光雪くんは何を考えているんだろう。私より可愛い子なんて沢山いるむしろ私より可愛いこの方が多い。なのに私が可愛いとかなんで?「光雪くんもかっこいい!」
プリを2人分に分けながら光雪くんが急に質問してきた。
「てかさ、なんで光雪くんって呼ぶの?呼び捨てでいいよ」
「わかった!」
また何も考えずに答えてしまった。光雪、なんて呼べるはずがない。あの美しい目で見つめられるとあとのことを考えずに答えてしまう。
「はい、」
光雪くん、いや、光雪がプリをくれた。光雪かっこいいな。そんなことを思いながらプリを見ていると
「どう?かっこよく写ってる?」
そんな質問ずるい。
「うん!かっこいい!私は?」
まるでカップルのようだ。お互いにかっこいい?可愛い?と聞き合うなんて。
「めっちゃ可愛いよ!」
「ありがと」
照れてしまった。バレたくない。
「じゃあ飯食い行こ!」
「うん」
私たちはご飯を食べに行った。
「美味しい!」
「な!めっちゃうめぇー」
光雪が口いっぱいにご飯を詰めて美味しそうに食べている。
「ご馳走様!」
「ご馳走様」
めっちゃ美味しかった。
「この後どうする?」
私が聞くと光雪は少し悩んでから
「そうだ!連れていきたいとこあるんだ」
と言って歩き出した。私もついて行った。
どこだろう。通る道は何となく見た事あるけどここから家までの道は分からない。結構遠い場所まで来た。線路を超えたところで光雪が
「ここ俺ん家。友達にはあんまり教えたくないから学校の仲いいヤツにも教えてない。でも雪音になら教えられる。」
マンションを指さしながらそういった。また頭がおかしくなった。光雪には親友がいるし、一軍グループにも属している。なのに私しか光雪の家を知らない。そんなことを思いながら
「へー!そうなんだ。覚えとくね。あと、誰にも言わないから」
「ありがと」
これで良かったのか、もっといい答えがあったのか、それを考えていた。しばらくして公園に着いた。
「よいしょ」
「っっ!?」
光雪が私のブランコに乗ってきた。2人乗り状態、しかも私が座って光雪が立っている。かなり危険だ。
「怖かったら言って」
それだけ言われて光雪がこぎ始めた。普通のモテる女子ならばキャーとか怖いとか言うんだろうけど私は男子とブランコ二人乗りを数え切れないほどやってきた。急にブランコが高くなった。今までにないくらい怖くなった。
「1回止めて!怖い」
弱い自分を見せてしまった。怖いなんて言ってしまった。またあの時のようになったらどうしよう。
「ごめんごめん。止めるね。大丈夫?」
あの時のことを思い出して焦っていると急に抱きしめられた。
「っっっ!」
驚きを隠せない。弱い自分を見せてしまって焦っていたのに抱きしめられて倒れそうになった。
「ごめんな。怖かったな。大丈夫だよ」
しかもこんなに優しい言葉をこんなに優しい声でかけられれた。
「ありがと。なんかこんなに高いの初めてで怖くなっちゃった」
そう答えることしか出来なかった。
「あっ、暗くなってきたしもう帰るね、また明日!」
そう言って公園から走って帰った。走ってる途中、頬がひんやりとした。次々と冷たいつぶが頬をたれていく。涙だと気づいた時には家に着いていた。泣いているのをバレたくないので治まるまで部屋で過ごした。あの時のことは忘れよう。そう心にいいきかせた。いつもどうりパパは仕事でいなくてママは2階で料理をしていた。
「ご飯できたよー」
ママがご飯を運んでくれた。すごく美味しそうだ。
「いただきます!」
泣いていたのがバレないように元気を装う。バレてない。良かった。そう思ったがママは感が鋭いのだ。
「なんかあったの?」
どう答えていいのか分からなくなった。でもママにならなんでも言える。
「今日光雪くんって子と遊んだんだけどさ。ブランコ二人乗りしてすごいブランコが高くなった時、」
ママがなぜかすごく驚いた顔をしている。「どーかした?」
私が聞くと
「ううん。なんでもないよ。あ、雪音もしかしてそブランコであの時のこと思い出したの?」
すごく感が鋭い。
「そうなの。私はもう忘れたと思ってたのになんか思い出しちゃって」
そう言うとママがとっさに答えた。
「もしかしたら雪音は忘れたいことかもしれないけど忘れちゃダメって覚えておいて」
なんで?という言葉しか頭になかった。だってあの記憶はいつも私を傷つける。でもママの言うことはいつも正しい。だから言うことは全部聞くようにしている。