ディズニーから帰った次の日は、なんとか宿題の一部を終わらせることができたが、そらからが忙しかった。
 1週間に最低3回は電話がかかってきた。多い時なんか、ほぼ毎日かかってきた。それで、何をするかも聞かされず、待ち合わせ場所に行けば、急に原宿行くだの、ハイキングに行くだの言われ、いやいやついていったことも多かったけど、最終的に楽しかったと思って家に帰っていた。お母さんにも、
「最近楽しそうねぇ」
と言われてしまうほどだった。

 夏休みも半分が過ぎたころ、僕は明日、お母さんとお父さんと、旅行に行くことになった。近くの温泉宿に一泊するだけ、ということだったけど、僕も一緒に旅行に行くなんて本当に久しぶりのことだったから、お母さんは張り切って荷造りをしていたし、忙しいお父さんも、珍しく、早く帰ってきて、一緒に夕飯を食べよう、と言っていたのを聞いた。
 僕も久しぶりにお父さんと顔を合わせると思うとよくわからないけど緊張して、なんか、落ち着きがなくなっていた。
 そんな時にスマホが鳴ったものだから、僕はとても驚いた。でも、驚くのはその内容だった。


「今から、学校の近くの病院来て。場所は後で送っとくから。とりあえず、今すぐ家出る準備して、早く、来て」
いつになく真剣な声で病院に来てなんて言われた。あまり現実味がなくて、少しの間動けなかった。
「優希?電話は、何の用だったの?」
と言われるまで、ぼーっとしていることにも気づかなかった。
「ごめん、僕今から病院行ってくるから。お父さんが働いてるとこだから、多分行き方はわかる。ごめん、夕飯一緒に食べられないと思う」
「そんなことはいいから、早く行ってらっしゃい」
お母さんの言葉もよく聞かず、必要最低限のものだけ、その辺にあったバッグにつめて、とりあえず走った。




「莉里さん!?志穂さんは?」
「志穂は今、診察受けてる。いつも通り遊んでたら、志穂が急に体調悪くなって、倒れて、私、救急車乗って一緒に来たはいいけど、どうすればいいかわかんなかったから、急に優希君呼んじゃった」
いつものおっとりした様子とは違って、すごく早口で喋る莉里さんを見て、僕はとても焦った。でも、何を話していいか、何を言ったらいいかわからなくて、2人の間には沈黙が続いた。


「志穂さんのご家族の方」
「はい、私たちです」
無事診察が終わったということを聞き、やっと一安心できた僕たちだったけど、病室に案内され、安心などしていられないと思った。

「ごめんね、心配かけて」
「何があったの?」
今にも泣きそうな莉里さんに、志穂さんも泣きそうになっている。
「私、あと少ししか生きられない」