「ねえ、料理来たよ?食べないの?」
 学校から無理やり連れ出されたかと思ったら、連れてこられたのは、駅近くのファミレスだった。確かに、6時を過ぎると混み始め、急いで良かったのかもしれないと思う。

 じゃなくて。
「僕、頼んだ記憶ないんですけど」
「そりゃね。私と志穂が勝手に頼んだもん」
「は?」
意味がわからない。そもそも、僕は無理やり連れてこられただけで、まだ、食べるとも食べないとも言ってないし、てゆうか、今すぐ帰りたい。
「食べないの?冷めちゃうよ」
「…いただきます」
悪いのはセンパイたちで、食べ物は悪くない。残すのは、店に悪いし。しょうがなく。
 久しぶりに誰かと食べる食事は、いつもより美味しく感じた。気のせいかもしれないけど。
「で、何で、僕は急にファミレスで、センパイ方と夕飯を食べているのでしょうか」
「え〜?」
「親睦会を兼ねて。私たちの入部記念だ。部員で食事に出かけるのも、悪くないだろう」
「はぁ。いや、急に連れてこられても困るんですよ。もう6時半過ぎますし、センパイ方の親御さんとかも心配するでしょうし、」
あ、やば。お母さんに、今日夕飯いらないって言わないと。
「うちの親は、大丈夫だよ。友達と遊ぶって言ってあるし」
「私も大丈夫だ。夕飯は外で食べる、と言ってある」
「大丈夫じゃないのは、僕だけか」
スマホでお母さんに連絡をしていると、2人が驚いたような顔をして、こちらを見てきた。
「何ですか。顔に何かついてます?」
「いや、桜ってスマホ持ってるんだ、と思って」
「僕を何だと思ってるんですか。スマホくらい持ってますよ。親と連絡取れないと困りますし」
 すると、はい、と言って急にスマホを差し出される。
「、、何ですか?」
「何ですか?じゃないのよ。連絡先、交換。同じ部活に入ってるんだよ?連絡先くらい知ってもおかしくないよね」
「はぁ、わかりました」
この時の僕はどうかしていた。もう何を言っても無駄だ、と諦め、センパイ連絡先を交換する、なんてことをやらかした。この先、とても面倒くさいことに巻き込まれることになるとも知らずに。いや、もしかしたら、心のどこかで、こうなることはわかっていたのかもしれない。センパイたちのおかげで、嫌な予感は、嫌なほどあたることを学んでいたから。あの時の嫌な予感はこれだったのかな。