「志穂さんは、入院しているんですか⁉︎」
「はい、、、」
落ち着いた様子だった藍沢さんでさえ、志穂さんの入院という事実には動揺を隠せないようだった。
「病気って。中学の時はそんなそぶり、少しも、、」
「中学の時に、発病したんだって、志穂言ってました。私も、全然気が付かなかった。気付けなかった。私が、1番近くにいたはずなのに」

 病院に向かう電車の中、俺たち3人は、相変わらず沈黙のままだった。志穂さんの入院という事実は、それだけ、重みのある事実だということ。それを、実感させられてしまうのが恐ろしくて、窓の外の景色に目を向け、あまり考えたくない、と思うことで精一杯だった。




「え、ほんとに、藍沢くん?はやいね、今日来てくれるとは思わなかった〜」
ニコニコしながら言う志穂さん。病気だと知ってしまってから、志穂さんは、今までみたいに、言葉がキツかったりすることがない。柔らかいことばをつかって、まるで、莉里さんみたいに。
「坂野さん、体調はどう?」
「平気だよ。ほら見てわかるでしょ?全然元気!」
病気だと言うことが、お互いの行動を空回りさせている。見ていられなかった。
「じゃあ、俺、先帰ってます」
「あ、わ、私も!またね、志穂!」
俺と里莉さんは、慌てて、病室を出て、そのまま、言葉を交わすことなく、それぞれ家に帰った。