「ずっと好きでした、付き合ってください。」
今、私は学年一イケメンな藤田蒼君に告白されている。近くで見るとやっぱりカッコよすぎる。でも、どうしてそんな人が私に告白したんだろう。
「あの…。」
余計なことを考えていて返事するのを忘れていたことに気がつく。
「あ、ごめんなさい。どうして私なんだろうと思って。」
「それは、性格を知って惚れました。 「ずっと好きでした、付き合ってください。」
今、私は学年一イケメンな藤田蒼君に告白されている。近くで見るとやっぱりカッコよすぎる。でも、どうしてそんな人が私に告白したんだろう。
「あの…。」
余計なことを考えていて返事するのを忘れていたことに気がつく。
「あ、ごめんなさい。どうして私なんだろうと思って。」
「それは、性格を知ったからです。」
予想外の答えに戸惑いが隠せない。
「え?」
「少し前に見たんです。転んだ女の子にすぐ声をかけてあげる天宮さん。優しく微笑みかけてあげてる天宮さんを見て、尊敬したんです。そこからいつも天宮さんの事考えるようになって、気づいたら好きになってました。」
自分をそんなふうに見てくれている人がいたなんて、正直びっくりだ。でも、そんなふうに見てくれた藤田くんは絶対優しい人なんだろうなと思えた。だから…
「ありがとう。私でよければよろしくお願いします。」
「え!本当に!?ありがとう!」
とても嬉しそうに笑う藤田くんの姿は、太陽のようにキラキラと輝いていた。
窓の外はすっかり暗くなり、半分にかけた月が空高く浮かんでいる。校門を出ると、私たちは駅に向かって歩いた。夜8時の駅でも人は沢山いた。すぐ来てくれた電車には人があまり乗っていないため、私たちはイスに座る。肩と肩がぶつかり合う程の近距離で、心臓の音はバクバクだ。少しして藤田くんは口を開いた。
「俺、次の次で降りちゃうんだけど、天宮さんは?」
「わ、私もだよ。」
顔の距離も近すぎて心臓は張り裂けそうだ。長いまつ毛にパッチリ二重の目、小さい顔と高い鼻、全てがよく見えるけど毛穴だけは全く見えない。すぐに自分は何考えてるんだと恥ずかしくなった。ほんとに整った顔だからご両親のお顔も気になってしまう。
駅を出ると、藤田くんは足を止めた。
「あ、あのさ…」
そこでとまると、藤田くんは顔を真っ赤にしてから、また話しだした。
「か、花恵って呼んでいいかな?」
「も、もちろん!」
嬉しすぎて今にも飛び跳ねそうだ。好きな人に呼び捨てで呼んでもらえるなんて、本当に幸せだ。
「じゃ、じゃあ、俺のことも…」
「蒼!って呼ぶね!」
ぱあっと明るくなった蒼はとても嬉しそうだった。
「うん!」
2人で笑い合うこの時間がいちばん幸せを感じられた。少しずつでも距離を縮めたい、そう思った。
「俺、左なんだけど、花恵は?」
「私も同じ!」
もしかしていえ近かったりして、と淡い期待を寄せながら、私たちは再び歩き出した。その途中にも、誕生日や兄弟の事など、小さいことを沢山話し合った。
「俺もうすぐだけど、花恵は遠い?」
「私ももうすぐだよ。」
蒼は私の家まで送ってくれた。本当に優しい男の子なんだな、とこっちが尊敬する。
「俺ここから3分くらいで家着くよ、近いね!」
「近っ!」
さっきの期待通りだったことが嬉しくて、また笑いあった。少しして蒼は帰り、玄関を開けると夕食の匂いが漂っていた。
「お帰り、すぐ食べられそう?」
「うん!すぐくる!」
自分でも機嫌がいいことはすぐ分かるほど、声は弾んでいたと思う。
「花恵遅いー」
弟の伊緒が大声で言った。
「ごめんごめん!ちょっとまってて!」
まだ中一の伊緒は、お腹ぺこぺこだと思う。部活もサッカー部で沢山動くから尚更だ。
「いただきます。」
夕食を囲んで家族4人で食べ始める。私たち家族はいつもみんなで食べる。お母さんも少しは楽になるし、みんなで食べた方が楽しくて美味しいから。
食べ終わってすぐ、部屋に戻りスマホを確認した。蒼から二通のLINEがきていた。
『今日はありがとう!明日出来ればでいいんだけど、一緒に学校行かない?俺が迎えに行くよ。』
つい口が緩みにやけてしまった。
『私こそありがとうだよ!嬉しかった!明日一緒に行こ!』
ワクワクが止まらなかった。初めて彼氏と一緒に登校。こんな夢みたいな日が自分に来るとは思ってもみなかったことだ。

次の日の朝。私はいつもより少し早く起きて準備をし始めた。いつもとは違うアレンジを髪に加え、制服も完璧に着る。スカートは少しだけ短く履いた。少し早めに家を出て、家族にはバレないよう平然を装う。外に出てすぐ蒼は来た。
「ごめんね!待たせちゃったかな。」
「全然!今でたこと。」
「そっか、よかった。じゃあ行こうか。」
心を落ち着かせて青空の下を歩き始めた。好きな人と一緒に。

学校に着き、クラスに入ると直ぐに、ニコニコしながら親友の芹沢萌花が歩み寄ってきた。
「花恵!花恵ってもしかして…」
バレたのかとドキドキが止まらない。
「な、なに?」
わかりやすく動揺してしまった。
「今日の放課後どっか行くの?」
よかった、バレてないとひと安心した。
「へ?なんで?」
「だって、なんかいつもり気合入れてるように見えて。」
「え、そ、そうかなぁ?どこもいないよぉ。」
自分でも相当わかりやすいヤツだと思ったけど、正直萌花にはバレても仕方がない。萌花とは小学生の頃から仲良くて、隠し事をしても直ぐにバレてしまうから。モカにはどうしても隠し事ができない。
「じー。もー、花恵は隠し事が下手すぎだよ!ほら、何かあるんでしょ?」
こうやっていつも見透かされてしまう。本当に萌花は凄い。悩み事があるときにも力になってくれて、最高の友達だ。
「大声とか、出さないでね?口にも出さないでね?誰にも言っちゃダメだよ?」
「え、なになに、めっちゃ気になるじゃん。あー、もしかして、彼氏が出来たとか?」
何も言えなくなるほど驚いた。的中だ。
「じ、実は、藤田蒼って知ってる?」
「そりゃー学年一イケメンなんだから有名じゃん。」
そんなに有名な人と私が付き合ってるって言ったら、萌花はどんな反応するだろ。驚くだろうと思いながらも、
「その、蒼と付き合ってる。」
ギリギリモカに聞こえる程の声で言ったから、聞こえなかったのか萌花は少し固まった。
「えーー!!??」
「声でかい!」
クラス中の注目が集まっ手渡しはさらにかおを赤くした。きっと真っ赤だ。
「えほんとに!?いつ!?なんで!?どっちから!?」
唐突の質問攻めにあい少し戸惑いながらも予想通りで安心した。
「昨日、あっちから、性格を尊敬してなんとかかんとかって。」
結構略しちゃったのは内緒だ。昨日のことを思い出すとすぐ恥ずかしくなる。絶対に聞かれるだろうなとは思っていたけど、実際聞かれるととても恥ずかしかった。
「え、すごいじゃん!おめでとう!」
少し小さな声だけど、満面の笑みで萌花は喜んでくれた。萌花といると安心するし、たのしい。ほんとに友達でよかった。
「デートとかしないの!?」
「で、デート!?」
そんな事考えもしなかった。蒼とデートなんて、考えただけで目眩がしそうだ。学校の人に見つかったらどうしよ、と思いながらも、正直デートはしてみたい。すごく幸せだろうなと思う。
「映画見たり、遊園地行ったり、一緒に服選びに行くよ?」
ニコニコと楽しそうな萌花を見ていると自分自身もそんな気持ちになってくる。
「服選び、行きたいな。」
「でしょ!?今日とかどう?」
さすが萌花だ。行動力が凄い。
「一応空いてるよ?」
「じゃあ、決まりね!あー!楽しみだなぁ!」
本気で喜んでくれてると思うと嬉しくてたまらない。服選びに行くのワクワクが止まらない。でも、どうやってデートに誘えばいいかが一番の問題だ。もし断られたりしたらどうしよう、と不安が募るばかり。でも、蒼は優しいから、絶対にOKしてくれるはずだ。どんな服が蒼は好きなんだろうか。どんな髪型を好んでいるのか。
蒼とのデートのことを考えていると、あっという間に1時間目は終わっていた。それから二時間目、3時間目、お昼の時間がやってきて、ついに下校。ふとスマホを見てみると、蒼からのLINEが来ていた。
『今日も一緒に帰れる?』
すごく一緒に帰りたいけど、萌花と服を選びに行く予定だから帰れない。
『ごめん、帰れない。放課後に萌花と一緒に過ごす約束しちゃった。』
『そっか!楽しんで!』
もしかしたら嫌われちゃうかな、と思っていたけど、そんな心配入らなかった。蒼は本当に優しい、自慢の彼氏だ。
「花恵ー!行こ!」
「うん!」
電車に乗り、私と萌花はショッピングモールへ向かった。そこには食べ物屋さんやお洋服屋さんなど、たくさんのお店が立ち並んでいる。隣の萌花も子犬のようにキラキラと目を輝かせている。
「花恵!ここのお店!凄くいいよ!」
外見からしてオシャレな雰囲気のお店へ私たちは入った。中は少し香水のような匂いがしてしずかで落ち着いた空間だ。店内は女性客しか見当たらない。お店の服はどれもオシャレで可愛いものばかりが並んでいる。
「絶対下はスカートとかの方がいいよ!」
「ワンピースとか?」
「そうそう!」
二時間迷ってようやく、白の半袖トップスに水色でジーンズ生地のサロペットスカートに決まった。夏に合う爽やかな印象のコーデ。
「やっと決まったねー。」
「そうだねー、なんか疲れたー。」
「花恵!おすすめの場所があるんだけど!」
「ん?どこ?」
萌花がそう言って連れていってくれたところは、パンケーキ屋さん。
「甘いものとかどうかなーっと思って!ここのパンケーキ、すごく美味しいの!」
「萌花はよく知ってるんだね!すごい!食べてみたいから入ろっか!」
店内に入ると同年代ほどの女の子や男の子で賑わっていた。中にはカップルもチラホラ。
「ここね、つい最近従姉妹と来たばっかなの!」
「あ、佳澄ちゃん?」
「そうそう!私たちと同い年だから一緒に遊ぶ時はよくここら辺来るの!」
「そうだったんだ!いいなぁ!」
私の従兄弟は小学六年生の駿君と、中学2年生の悠くん、それから大学1年生の心春ちゃんだからみんな年がバラバラだ。そのせいで萌花のように遊びに行くことはあまりない。
「花恵もこういうとこデートで行ったらどうかな?」
「い、いやでも!まだ行くかもわかんないし…。」
「絶対いくよ!服もさっき買ったでしょ!」
「ん、まあ…。」
自分で誘えるか不安しかないけど、萌花がいてくれてるから少しは勇気が出る。
パンケーキはとっても美味しくてあっという間に食べ終わってしまった。もう来てから3時間目以上経過していて、時間は7時を回っていた。
「さて、帰るかー。」
「そーだね!今日はありがとう!」
「それにしても驚いたよー!本当に本当なの!?」
「今更なによ!本当だってば!」
「じゃあ、デートしたら写真見せてねぇー。」
意地悪く萌花は言った。でも本当は、こんな明るくて優しくて思いやりのある萌花に彼氏ができないことの方が、私的には信じられない。顔だってかわいくて、ボブもよく似合っていて、オシャレだし、メイクも上手い。そんな萌花がどうして彼氏がいないんだか。
「じゃ、また明日ね!」
「またねー!」
萌花と別れて、すぐ家に着くと、スマホを開いた。
『今日はごめんね!明日は一緒に帰れると思うんだけど…。』
そう送ると、直ぐに返信が来た。忙しいかなと心配していたからか、嬉しさと安心感が湧く。
『全然気にしないで!』
またすぐ続いてLINEは来た。
『それとさ、今週末、出来ればでいいんだけど、どこか出かけない?』
一瞬言葉を疑ってまた繰り返し読む。でも、何度見ても変わらなかった。これは、デ、デートの誘い…だよね?自分の心で何度も言い返しやっと整理がつくと、嬉しさのあまりベッドへ飛び込んだ。
『行きたい!土曜日はどうかな?』
『部活もないし、いいよ!』
今日萌花と話していたことが本当に現実になったことが信じられない。楽しみで寝られないかも、なんて考えながら、夕食を食べ、お風呂に入り、あっという間に時計の針は11時を指していた。