プロローグ

 日本のとある場所には隔絶された龍神が住まう地区がある。
 本来、天界に住まう龍神と、人間とを繋ぐ場所。
 そこは遙か昔より龍神に支配された、ある意味ひとつの国と言っていいかもしれない。
 幾多の龍神が訪れるその場所を、人は龍花の町と呼んだ。
 長い長い時を生きる龍神が天界より気まぐれに舞い降りる場所。
 それであると共に、龍神が伴侶となる者を捜すための場所でもあった。
 龍神の伴侶となる者には生まれついて花の形をしたアザを持つのである。
 そのアザを持った者は国への報告義務があり、それを破ると厳罰に処させるという。
 伴侶がこの世に生を受けると、神にも同じアザが浮かび上がり、神は龍花の町を訪れ、自分と同じ花のアザを持つ者を迎えに行くのだ。
 伴侶は人間としての生を終えると、龍神と共に天界へと登っていくという。
 普通ならば、アザを持つ子が生まれたら、そのまま龍花の町へ送られ、子供はその町で暮らすのだ。
 それ故、龍神が龍花の町に降りれば、すぐに伴侶と出会えることができる。
 そう普通ならば……。