「…ニャ?」
寝そべっていた子猫が、目を開けた。
(ここは、…家の近所の公園?)
辺りを見回す。
(公園の木…公園の回旋塔…で、でも、随分大きいな)
(私、さっき、「ニャ」って言った…え…何が起きているの?)
ふと、自分の手を見た。
(えええっ!白い毛がフサフサ生えてる!)
ユナは子猫になっていた。
美しく可愛い雌の白い子猫になっていた。
ユナは白い子猫に転生したのだ!
子猫になったユナは、とてもお腹がすいていた。
しかしそれよりも…。
(ここが近所の公園、ということは
…ハナの家にもここから行かれるはず!)
「グルルルル…」
左前方を見ると、ユナより少し大きな三毛猫が、
ユナを凝視して喉を鳴らしていた。
(逃げなきゃ!)
白い子猫になったユナは、必死に逃げた。
一目散に、全速力で、ハナの家めがけて駆けていく。
ハナの家の生け垣の裏の植木に身を寄せ、隙間から道路を見ると、
追ってきた三毛猫が通り過ぎていくのが見えた。
(もう大丈夫だわ)
幸い、天気が良かった。
かなり明るいので、今は昼下がりだろう。
(そろそろ、ハナが家に帰ってくる頃だわ)
「ニャー、ニャー」
ハナの家の玄関前で、ユナは鳴いた。
「ニャー」
ハナは、ユナが亡くなったショックで、
まだ高校に登校できず、家に居た。
「あら、猫が鳴いてる。玄関の方かしら」
一人で留守番をしていたハナは、玄関を開けた。
「ニャー!」
「…あら、子猫。まあ…なんて可愛いの…」
色が真っ白な子猫だった。
左右の瞳の色が違う。
左目がブルー、右目がグリーンのオッドアイだ。
ハナは、考える間もなく、白い子猫を抱き上げていた。
大きく口を開けた笑顔の瞳から、大粒の涙が溢れ、流れた。
この白い子猫は、きっとユナの生まれ変わりに違いない!
ハナは、白い子猫を優しく抱き締めた。
ハナは早速、
両親にこの白い子猫をどうしても飼いたいと頼んだ。
すぐに認めてもらえた。
ハナは、白いオッドアイの子猫に『ユナ』と名付けた。
◇ ◇ ◇
2年後、ユナの養父は酒酔い運転で事故死した。
親戚も元妻も葬式を執り行なわず、もちろん墓もない。
遺体は警察の遺体処理班が処分した。
◇ ◇ ◇
ユナはハナの部屋の中で飼われることになった。
高校に行く前に、ユナが寒いといけないので、
エアコンを消すことはなかった。
暗くなる前に帰宅し、勉強中もユナを膝に乗せていた。
眠るときは、
ユナが布団の中にモソモソと入ってきて、一緒に寝た。
ハナは、ユナと一緒に居られる限り一緒に居て、
可愛がれるだけ可愛がった。
ありったけの無償の愛を
注ぐことができる幸せを噛みしめていた。
天気の良い日曜日には、
ユナに暖かい毛糸で編んだ洋服を着せて、
公園に散歩に出かけた。
もちろん、リードなどつけずに。
ユナはハナの傍らを離れず、チョコチョコついてきた。
ユナがリュックに入って、
顔だけ出していることもあった。
すれ違った女の子たちが
「きゃーっ、可愛い!」
と黄色い声を出して、ユナを愛でることもあった。
ユナと一緒に居るハナを、幸福感が満たした。
木漏れ日が、チラチラと揺れ動いて、眩しかった。
太陽は、ハナとユナを照らす光を、惜しみなく注いだ。
眩しい光に照らされたユナのオッドアイを見つめながら、
ハナがつぶやいた。
「ユナが大きくなっても、これからもずっとずっと一緒だよ」
完
寝そべっていた子猫が、目を開けた。
(ここは、…家の近所の公園?)
辺りを見回す。
(公園の木…公園の回旋塔…で、でも、随分大きいな)
(私、さっき、「ニャ」って言った…え…何が起きているの?)
ふと、自分の手を見た。
(えええっ!白い毛がフサフサ生えてる!)
ユナは子猫になっていた。
美しく可愛い雌の白い子猫になっていた。
ユナは白い子猫に転生したのだ!
子猫になったユナは、とてもお腹がすいていた。
しかしそれよりも…。
(ここが近所の公園、ということは
…ハナの家にもここから行かれるはず!)
「グルルルル…」
左前方を見ると、ユナより少し大きな三毛猫が、
ユナを凝視して喉を鳴らしていた。
(逃げなきゃ!)
白い子猫になったユナは、必死に逃げた。
一目散に、全速力で、ハナの家めがけて駆けていく。
ハナの家の生け垣の裏の植木に身を寄せ、隙間から道路を見ると、
追ってきた三毛猫が通り過ぎていくのが見えた。
(もう大丈夫だわ)
幸い、天気が良かった。
かなり明るいので、今は昼下がりだろう。
(そろそろ、ハナが家に帰ってくる頃だわ)
「ニャー、ニャー」
ハナの家の玄関前で、ユナは鳴いた。
「ニャー」
ハナは、ユナが亡くなったショックで、
まだ高校に登校できず、家に居た。
「あら、猫が鳴いてる。玄関の方かしら」
一人で留守番をしていたハナは、玄関を開けた。
「ニャー!」
「…あら、子猫。まあ…なんて可愛いの…」
色が真っ白な子猫だった。
左右の瞳の色が違う。
左目がブルー、右目がグリーンのオッドアイだ。
ハナは、考える間もなく、白い子猫を抱き上げていた。
大きく口を開けた笑顔の瞳から、大粒の涙が溢れ、流れた。
この白い子猫は、きっとユナの生まれ変わりに違いない!
ハナは、白い子猫を優しく抱き締めた。
ハナは早速、
両親にこの白い子猫をどうしても飼いたいと頼んだ。
すぐに認めてもらえた。
ハナは、白いオッドアイの子猫に『ユナ』と名付けた。
◇ ◇ ◇
2年後、ユナの養父は酒酔い運転で事故死した。
親戚も元妻も葬式を執り行なわず、もちろん墓もない。
遺体は警察の遺体処理班が処分した。
◇ ◇ ◇
ユナはハナの部屋の中で飼われることになった。
高校に行く前に、ユナが寒いといけないので、
エアコンを消すことはなかった。
暗くなる前に帰宅し、勉強中もユナを膝に乗せていた。
眠るときは、
ユナが布団の中にモソモソと入ってきて、一緒に寝た。
ハナは、ユナと一緒に居られる限り一緒に居て、
可愛がれるだけ可愛がった。
ありったけの無償の愛を
注ぐことができる幸せを噛みしめていた。
天気の良い日曜日には、
ユナに暖かい毛糸で編んだ洋服を着せて、
公園に散歩に出かけた。
もちろん、リードなどつけずに。
ユナはハナの傍らを離れず、チョコチョコついてきた。
ユナがリュックに入って、
顔だけ出していることもあった。
すれ違った女の子たちが
「きゃーっ、可愛い!」
と黄色い声を出して、ユナを愛でることもあった。
ユナと一緒に居るハナを、幸福感が満たした。
木漏れ日が、チラチラと揺れ動いて、眩しかった。
太陽は、ハナとユナを照らす光を、惜しみなく注いだ。
眩しい光に照らされたユナのオッドアイを見つめながら、
ハナがつぶやいた。
「ユナが大きくなっても、これからもずっとずっと一緒だよ」
完