「図書室だったんだ……」
カタンと鍵を開けて、教室よりも古びた引き戸をカラカラと開き、私達が入ったのは図書室。
少しホコリっぽい気もする、本特有の独特な匂いのする空間。
だけど早朝のそこは、夏だというのに空気がひんやりとしている気がして、気持ち良い。
「でもよく鍵貸してもらえたね」
言いながら振り返る私の後に入って引き戸を閉めたのは……前原くん。
放課後、涙を流しながら前原くんに謝ったあの日。
あれから私達は少し話をすることが出来た。
そのときに朝はどこにいるのか……っていう話になって、今朝に至るのだけど。
「あぁ……勉強したいからって言って、貸してもらってるんだ」
木造の長机の上にカバンを下ろしながら、前原くんが答える。
「そうなんだ」
「てっきり普通に読書かと思った」と、続けると、「まぁそれもあるけどね」と、前原くんは苦笑した。