いつもは早くても、予鈴が鳴る15分ほど前。
だけど今日は30分以上も早く。

並んだ下駄箱の棚の影から、そっと覗く。


私の目に映るひとりの……眼鏡をかけた男子は、前原くん。


胸に手を当て、ドキドキと緊張する鼓動を落ち着かせて。

声をかけようとした……瞬間だった。


「おはよ、実優」

「きゃっ!」


ポンッと肩を叩かれて、びっくりして悲鳴を上げた。

振り返ってみると、後ろに立っていたのはキョトンとした朱里。


「こんな早くに珍しいじゃん。何してんの?」

「あ……いや、別に……」


不思議そうに訊ねられて、口ごもる。

困った私が逃げるように「朱里は?」と聞き返すと、


「昨日、体育館にシューズ忘れて帰っちゃって」


これから取りに行こうと思ってさ……と、続けられた。