「ねーねー前原ってさぁ、彼女とかいたことあんの? おーい、前原くーん」


読書をする彼の首にぐるんと腕を巻き付けて、ケラケラと笑う男子達。

前原くんはじっと耐えるように黙っている。


質問に何の意味があるのか分からない。

からかってバカにして、面白がっているだけ。


そんな幼稚じみたクラスメートの様子を、私は無意識のうちに見つめてしまっていたみたい。


「実優」


少し強く呼ばれた名前に、「え?」と前を向くと、そこには少し怖い顔をした朱里がいた。


「昨日言ったよね」

「……」


咎めるような朱里の言葉に口ごもる。すると、


「何? 何かあったの?」


首を傾げるのは梨花。


「ううん、大したことじゃないの。ね、実優」

「……うん」


私が朱里の言葉に頷くと、梨花は「ふーん」と軽く返事をして、


「それでね、聞いて!」


さっきまでしていた週末デートの話の続きを、楽しそうに話し出した。