友達と呼べる人が、はじめからいなかったわけじゃない。
小学5年生ごろまでは普通に友達もいて、みんなで野球したりゲームしたり、クラスの輪に入れないなんてことはなかった。
だけど高学年になって、算数なんかの授業が基礎から応用へと変わり始めたころ。
自分が他の人よりも少しだけ、勉強が出来ることに気付いて。
少し復習をして臨んだテストが、クラス唯一の100点。
それを両親に話すと、すごいじゃないかと喜んでくれた。
そのときから勉強をするのが楽しくなって、塾にも通い始めて、父さんや母さんの期待に応えたいと思うようになった。でも……。
「つばさー!今日みんなでサッカーやるんだけど」
「ごめん、今日は……」
「は?お前また塾かよ。つまんねーやつだな」
遊びの誘いを断ってしまわなくてはならなくなり、いつしか友達と呼べるような関係の人はいなくなっていた。
それを寂しくなかったと言えば、ウソになる。
だけど、孤立するのを感じながらも、これでいいんだとも思っていた。
自分はみんなと進む道が違うから。
遊んでいる暇なんかないんだ……って。