「はーい、じゃあ今日も授業の前に始めます」


言いながら先生が一番前の席の人へ、プリントを配る。

そこからどんどん後ろへと回されてゆく、B5ノート半分ほどのサイズのプリント。


私の手にも回ってきたそれには、問題が全部で10問。

読みと書きが5問ずつの、漢字の小テスト。


3年生になってからほぼ毎日、受験に向けての対策だとかで、国語の授業の最初には漢字テストがある。

もはやお決まりになってしまったことだから、今更文句を言う人は誰もいない。


しんと静まり返る教室の中、私もシャーペンを手に取り、いつものように問題を解く。


読みは得意だけど、書きは少し苦手。

スラスラと前半の5問の答えを書いて、問題の書きに移ろうとしたときだった。

目に入った問題の文章に、手が止まる。


【問7 コウカイ先に立たず】


答えが、漢字がわからなかったわけじゃない。

それなのにペンを走らせることが出来なくなったのは、痛いほど突き刺さる言葉だったから。