「おはよう……」

「おはよう」

「ここに来るの、久しぶりだね」

「そうだね」


私の言葉に頷きながら、前原くんが図書室の鍵を開ける。


野球部もまだ朝練をしているくらいの早朝。

図書室どころか久しぶりに学校に来たのは、今日から新学期だから。

前原くんが職員室に鍵を取りに行ってる間に私が到着し、こうして図書室で一緒に勉強をする。

それは夏休み前と何も変わらない。


ただ、以前までと決定的に違うのは――。


「……前原くん」

「ん?」


図書室の長机にカバンを置いて、呼んだ名前。

向かい合った彼は顔を上げ、目と目が合ったそれだけで、恥ずかしくて顔が赤くなる。


「ううん!えっと……今日は自分の勉強していいからね!」


「ほら、宿題全部やってきたし!」と、空白をほとんど埋めたドリルを見せる。

すると、前原くんは「ありがとう」と返事しながら苦笑した。