芽依たちが帰った後、一人で泣いた。私がいじめられていたのは、嘘が絡み合った勘違いみたいなものだったって謝られた。そんなの許せるはずがなかった。シャツの腕を捲ってみると痛々しい痣が姿を現す。ふざけんな、勝手にいじめて勝手に謝って私がそこまで怒らなかったことに安堵して帰っていった。むしゃくしゃした。
階段を降りて、リビングへ行くと久々で懐かしく感じる。ずっと家の中にいたはずなのに自室にこもっていたからか、変な感じがした。
「えっ悠花?!」
私が出てきたことに驚いた母はつまずいて転びかけた。今まで直視しなかった母の顔はずっと老けてやつれていた。
「今までごめんね。でももう、引きこもるのはやめにするよ。迷惑かけてごめんね。」
母は、私を抱きしめた。
「あなたはあなたらしく進んでいけばいいのよ。」
母は、泣いているのを隠しているようだった。嗚咽混じりの声に私の目も潤んでいた。
さて、初めに何をしようか。
部屋の片付けを終えた私は、昼食を作った。一人では作り方がわからなくて母がそばについていたけど。味噌汁とハンバーグという比較的質素な料理だが、とても温かくいて美味しかった。私がいじめられていたこと、母には話さないままでいいと思う。私は、謝りにきた四人に死ぬほどムカついたけど、ここで私も立ち直らなければ一生悔しいままだと思った。だから一歩、前に踏み出そうを決心したのだ。
私が作ったハンバーグは好評で、仕事に出掛けている父に残しておこうと、母は笑顔でラップを取りに行った。
「少し外に行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
数ヶ月ぶりに外へ出た。太陽が眩しい。部屋の中ではほとんどカーテンを閉めていたから目がうまく開けられなかった。それでもいい。
近くを歩いていると、新しくオープンしたカフェが数軒あって新築の見たことの無い家も並んでいる。時間が過ぎていくのは私が感じているよりもはるかに早いのかもしれない。上を見ると青空が広がっている。真っ白い雲がところどころ出ていて、気持ちが良い。今までは日焼けを気にして好きだと思えなかった太陽もこうして体全体で光を感じると、元気をもらえる気がした。
「…悠花」
気持ちよく伸びをしていると後ろから私を呼ぶ声がした。反射的に身を縮めて振り返ると紗香が立っていた。
「久しぶり…外、出てるんだね」
「いいや、今数ヶ月ぶりに出たところだよ。いや、眩しいね。」
目を擦ると、涙が出ていることに気がつく。決まりが悪くて恥ずかしくて目を背ける。しかし、涙が止まってくれることはなかった。
「この近くに、景色がよく見える丘があるんだって。行ってみない?」
「行く。」
紗香はジーンズに白Tシャツというなんともラフな格好をしていたから彼女も散歩していたのかもしれない。
ここは住宅地なのに、坂を登ると本当に丘が見えた。街全体が見渡せて空気も美味しい。
「桜たちが、うちに来たんだ。」
「えっ。」
「いじめてたのを謝りにきた。許せなかったけど。あの人たちに負けたく無いと思って一歩部屋から出たら、部屋の片付けをするのも料理をするのも、簡単だった。」
「そっか。」
私、学校に行ってみようかな。そう言おうとしたけれど、まだいけないかもしれないからそれをいうのはやめておいた。私はまだ、夢に向かって走ることのできるエネルギーを持っていた。
「じゃあ、私も自分の人生を歩いていくことにする。悠花みたいにね。」
夕焼け空を見ながら、秋の風を二人で味わった。
階段を降りて、リビングへ行くと久々で懐かしく感じる。ずっと家の中にいたはずなのに自室にこもっていたからか、変な感じがした。
「えっ悠花?!」
私が出てきたことに驚いた母はつまずいて転びかけた。今まで直視しなかった母の顔はずっと老けてやつれていた。
「今までごめんね。でももう、引きこもるのはやめにするよ。迷惑かけてごめんね。」
母は、私を抱きしめた。
「あなたはあなたらしく進んでいけばいいのよ。」
母は、泣いているのを隠しているようだった。嗚咽混じりの声に私の目も潤んでいた。
さて、初めに何をしようか。
部屋の片付けを終えた私は、昼食を作った。一人では作り方がわからなくて母がそばについていたけど。味噌汁とハンバーグという比較的質素な料理だが、とても温かくいて美味しかった。私がいじめられていたこと、母には話さないままでいいと思う。私は、謝りにきた四人に死ぬほどムカついたけど、ここで私も立ち直らなければ一生悔しいままだと思った。だから一歩、前に踏み出そうを決心したのだ。
私が作ったハンバーグは好評で、仕事に出掛けている父に残しておこうと、母は笑顔でラップを取りに行った。
「少し外に行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
数ヶ月ぶりに外へ出た。太陽が眩しい。部屋の中ではほとんどカーテンを閉めていたから目がうまく開けられなかった。それでもいい。
近くを歩いていると、新しくオープンしたカフェが数軒あって新築の見たことの無い家も並んでいる。時間が過ぎていくのは私が感じているよりもはるかに早いのかもしれない。上を見ると青空が広がっている。真っ白い雲がところどころ出ていて、気持ちが良い。今までは日焼けを気にして好きだと思えなかった太陽もこうして体全体で光を感じると、元気をもらえる気がした。
「…悠花」
気持ちよく伸びをしていると後ろから私を呼ぶ声がした。反射的に身を縮めて振り返ると紗香が立っていた。
「久しぶり…外、出てるんだね」
「いいや、今数ヶ月ぶりに出たところだよ。いや、眩しいね。」
目を擦ると、涙が出ていることに気がつく。決まりが悪くて恥ずかしくて目を背ける。しかし、涙が止まってくれることはなかった。
「この近くに、景色がよく見える丘があるんだって。行ってみない?」
「行く。」
紗香はジーンズに白Tシャツというなんともラフな格好をしていたから彼女も散歩していたのかもしれない。
ここは住宅地なのに、坂を登ると本当に丘が見えた。街全体が見渡せて空気も美味しい。
「桜たちが、うちに来たんだ。」
「えっ。」
「いじめてたのを謝りにきた。許せなかったけど。あの人たちに負けたく無いと思って一歩部屋から出たら、部屋の片付けをするのも料理をするのも、簡単だった。」
「そっか。」
私、学校に行ってみようかな。そう言おうとしたけれど、まだいけないかもしれないからそれをいうのはやめておいた。私はまだ、夢に向かって走ることのできるエネルギーを持っていた。
「じゃあ、私も自分の人生を歩いていくことにする。悠花みたいにね。」
夕焼け空を見ながら、秋の風を二人で味わった。