僕には今、二人の娘がいる。
 長女が小学二年生、次女は保育園の6歳。
 そんなまだ幼い二人だが、本や漫画が大好きで色んな作品を読みあさっている。
 持っている漫画を読み尽くした長女が僕に言う。

「ねぇ、パパの本棚のやつ。読みたい」

 僕は戸惑った。
 娘たちに買い与えていたのは、少女マンガや日常系のマンガばかりで、平和な世界しか知らない。
 父親である僕は、どちらかというと、グロい系や暴力系、アングラ系。
 それから男の娘、女体化ものが一番好きだ。

 しばらくは貸せないと断っていたが、長女があまりにもしつこいので、ある日有名な少年マンガ「トラ●る」を貸すと見事にハマってしまう。
 パンチラシーンやパイチラシーンでゲラゲラ笑って、それを妹に見せつけ、ついには次女までエッチなシーンの虜になってしまった。

 長女が次に僕の本棚に目をつけたのは、女体化ものだった。
 この作品もかなりエッチなものだったが、それを所持している父親の僕を軽蔑するどころか、娘は「ねぇねぇ次の巻は!?」と催促してくる始末だ。
 しまいには、女体化ものと知らずに、おじいちゃんである僕の親父と一緒に古本屋で大声で「女体化のやつください!」とレジの兄ちゃんに叫んだぐらいだ。

 そんな長女だが、エッチ系は読めても、バトルもの。特にグロい表現は苦手。
 一年ぐらい前から流行っている某少年マンガ。妹を助けるために主人公が鬼を倒す作品。

 僕はアニメ化する前からおもしろい作品だなぁと思っていた。
 そして、アニメ化とともに、日本中で流行りだした。
 小学校や保育園でも、子供たちが喜ぶからと、先生がDVDを流したりしたらしい。
 耐性のない娘たちはトラウマになり、あの作品を怖がり、嫌うようになってしまった……。

 だが、YouTubeなどでパロディ動画などを見た娘は少しずつ興味がわき、テレビの再放送を見て、最近遅れたマイブームがきたらしい。
 今では、毎日作中の技を真似するほどで、グッズを買い集めている。

 そんなことがあって、しばらくして。
 早朝、僕は水を飲みにリビングに向かうと、長女がタオルケットを頭から被り、なにやらモソモソしていた。
 不審に思った僕は、タオルケットを取り上げる。
 そこにはスマホを持った長女がニヤニヤと笑っていた。

 僕は、色々と物騒な世の中だからとスマホを持たしている。
 扱えるのは電話とSMSぐらい。
 あとはキャリアのアプリ特典ぐらいだ。
 キッズケータイで良かったのだが、スマホにすれば、一円と店の人に勧められたからだ。

 最近はやたらとスマホを触るなと思っていたが、この日やっとその意味がわかった。
 ブラウザを使えないように、権限で管理していたのだが、どこで覚えたのか、Goo●leで検索していたらしい。
 僕は日頃からインターネットはちゃんと勉強してからと口をすっぱくして注意していた。
 父親に見つかった娘はいつになく、しゅんとしていた。

 とりあえず、Goo●leで検索できないように設定しなおそうとしたその時だった。
 履歴を確認すると、とあるワードが……。

 炭●郎 エロい
 伊●助 エロい
 善● エロい

「……」
 僕は怖くなってそっとスマホを閉じた。
 まさかとは思ったが、保育園児の次女の履歴も見ると、同様の検索履歴が……。
 とりあえず注意しておいた。

 その話を夜、妻に報告した。
 妻は「ああ、やっぱり」と知っているような反応だった。
 僕はどういうこと? と聞き返すと、妻がこう言った。

「この前、冗談で『煉●さんとか人気だけど、ひょっとして、‟そういうの”あるのかな?』って言ったんよ」
 と、二次創作の話を長女にしたらしい。
 それを聞いた娘は平然とした顔でこう答えたらしい。
「あるよ」
「え?」
「だから、あるよ。ほら」
 といって妻のスマホを使って検索しだし、ガチなイラストを妻に見せつけた。

 そこには、煉●さんの刀を主人公が「うまい、うまい!」している生々しいものだったらしい……。
 ビックリした妻は「ちょっと! これガチじゃない! 早く消しなさい!」と叱ったらしい。
 僕はそれを聞いて、恐怖を覚えた。

 長女の祖母、つまり僕の母は齢70を越えるおばあちゃんなのだが、杖をついてでもBL本を漁る腐女子だ。
 そして、息子の僕は男の娘ものが大好き。
 そのまた娘の長女はまだ小学二年生だというのに、もう知識として「それ」を知ってしまったのだ。
 きっと大人になった娘は、僕や母を越える変態さんになるのかもしれない……。

 よもやよもやだ。