僕は中学生の時にその漫画と出会った。

『隻眼の狂戦士』

 惜しくも2021年、作者様が亡くなってしまった。
 この世で大好きなマンガベスト3の一つだ。

 中学生時代のころ、僕は主人公にめっちゃハマった。
 身の丈を超えるような大剣を振り回す黒き戦士。
 最高じゃないか。

 その主人公は、夜になるとバケモノに襲われるのだが、他のキャラがそれを心配すると、決まってこういう。
 背を向けて、剣を構え「いつものことさ……」と。
 そう言い残すと、夜が明けるまで血まみれになりがなら、戦うのだ。

 くしくも未完で終わった作品だが、僕の人生におけるバイブルとして、今も心に深く刻まれている。
 そして、この作品の特徴として、もう一つある。

 なかなか新刊が発売されないことである。
 これはもう、あんな繊細な描写を書くのだし、先生が苦労されているので、ファンなら待つのは苦ではない。
 何年経とうとも……。

 だから発売日になると、ウキウキで本屋に走っちゃう。
 僕は電車で隣り町の本屋まで新刊を買いにいった。
 帰宅するのが待ちきれず、帰りの電車内でビニールを破ると、読みだした。

『いつものことさ……』

 かっこいい!
 くぅ~ 僕もこんなセリフ言ってみたいもんだ。
 読了すると、本を閉じて余韻にひたる。

 ふと、反対側の席を見ると、ひとりの若い女性が座っていた。
 驚くことに、僕と同じ新刊を手にしていた。
 眼鏡をかけた大人しい子で、食い入るように、あの名作を楽しんでいるようだ。

 なるほどなるほど、こんな若い女性も好きなのかぁ。
 さすがは、先生の作品だ。
 僕は自分のように、その光景を優しく見守っていた。

 その子は僕の視線に気がつくこともなく、本を読んでいる。
 読書家の彼女に感心していると、僕はあることに気がつく。

 それは、彼女の足元だ。
 膝丈ぐらいのミニスカートを履いているのだが、わずかに隙間が見える。
 どうやら、マンガに熱中しているせいで、太ももの力が緩んでいるようだ。
 徐々に、その開き方は大胆になっていく。

 車内を見渡すと、僕と彼女しかいない。

 気がつけば、彼女の太ももは全開だ……。
 つまり、シマシマのパンティが丸見え。
 
 わざわざ僕の目の前に座り、パンツを見せつけるだと!?
 しかも、同じマンガまで用意して……。

 まさか! この子、僕に惚れているのかもしれない!?
 いつものように……。

 了