久しぶりに目覚めが良かったのか、いつもより頭がスッキリしている。

いつもより少し早めに学校へと向かう。

途中、少し離れたところで救急車のサイレンが止まった。近くで事故でも起きたのだろうか。大した事がなければ良いけど。

隣のクラスがざわついているのに気が付いた。京介のクラスだ。何かがおかしい。

そのおかしい感覚が段々と嫌な予感に変わっていくのに気が付いた。でも、その予感は、すぐに確信に変えられた。

「白妙くん、今朝学校に来る途中で事故に遭ったんだって」

「救急車で運ばれたみたいだけど、なんかヤバいらしいよ」

ーーえ?

通学途中に聞いたサイレンの音は、京介だったんだ。

「先生!白妙君って事故にあったんですか?」

ショートホームルームで畑中君が魚住先生に聞いた。誰もが気になっていたことだったから、教室は一気に静まり返った。

魚住先生は、ちょっと面倒臭そうに

「さあな。何も聞いていない」

と言っていたけど、畑中君はさらに畳み掛ける。

「でも荒牧さんが救急車で運ばれてたのを見たって言ってましたよ」

「あー。そうだ。通学途中で事故にあったみたいだ。今担任の斉藤先生が病院に行っている。詳しいことはまだ何も聞いていない。以上」

先生はそう言って、必要最低限の連絡事項だけ伝えると、まるでこれ以上聞かないでくれと言わんばかりにそそくさと教室を出て行った。

でも、生徒の情報収集能力を舐めてはいけない。例え職員室で話そうが、その話し声は生徒の誰かに必ず漏れている。

そしてお昼休みに、とうとう一番聞きたくない噂が入ってきた。

「白妙君、亡くなったんだって」

その後の学校の記憶はない。気が付くと、制服を着たまま、部屋のベッドの上にいた。

そしたらお父さんが部屋に入ってきて、あらためて京介が亡くなったことを教えてくれた。

そこからの記憶は、ない。