わたしは本当にもう一度やり直したほうがいいのだろうか。

京介はこの前の出来事から前を向こうとしているのに、わたしは過去に戻ってなかったことにしようとしている。

今のわたしは戻ることではなくて、ここから先に進むことではないのか。

「彩叶、準備できたぞ」

家に帰ってベッドに寝転んで天井を見上げていたら、ハイデさんが現れた。

「ハイデさん、やっぱりわたし、巻き戻しできない」

「は?今更何言ってんだ?ビビったのか」

「そうじゃなくて……わたし、やり直すんじゃなくて、今の状態から先に進まないといけない気がするの」

「は?ふざけんな!せっかく準備したのに、お前は全部台無しにするつもりか!」

「……ごめんなさい」

妬まれても良い、なじられても良い。だってハイデさんはわたしを信じて準備をしてくれていたから。それを裏切ってしまったから、当然その報いは受けるつもりだ。

でもハイデさんは、しばらくわたしの目をじーっと見たあと、

「あっそ。もういい。勝手にしろ」

とだけ言い残し、すぐに消えてしまった。

これだけあっさり消えてしまうなんて予想していなかったから、余計に罪悪感が湧いてきた。

でももう言っちゃったからやるしかない。明日京介に会って謝ろう。もう一度わたしとスケートをやって欲しいと伝えようーー