もしも過去を変えられたなら。
誰もが考えたことのある妄想だ。
僕はこの妄想が頭に浮かぶ度に僕の脳裏には奴の声がする。
『時間、巻き戻してやろうか。』
意地悪で、けど根は優しくてお節介な奴。
僕は声とともに思い浮かぶ2つの顔に首を振る。
「大丈夫だよ。必要ない」
奴を安心させるように、彼女が困らないように。
脳裏に浮かぶ彼女はいつも笑っている。
明るく陽気ででも少し心配そうな笑顔を僕にいつも向けている。
大丈夫、大丈夫。
これは虚勢でもなければ、自己暗示でもない。
「それに、もし過去に戻ってしまったら…」
その先を僕は言わない。
彼らには伝わっているはずだから。
言葉にしない代わりに僕は、あの時の記憶を呼び覚ました。