ホテルに到着すると小走りに自室に戻り、ショルダーバックをベッドの上に投げ置き、トイレに駆け込んだ。トイレから出ると血糖値が低下したように全身が脱力感におおわれた。しばらく、ベッドの上で大の字になっていたが、ふたたび下痢に襲われた。そのあと、気力を振り絞ってシャワーを浴びたが、上半身から血の気が引くような感覚にとらわれた。シャワーから出たあと、再びベッドの上に倒れこんだ。しばらくじっとしていると、すこしずつ気力が回復してくるような気がした。
八王子の家を出るとき、
「水が変わると腹の調子が悪くなるよ」
と母に下痢止めを持たされたのを思い出して、スーツケースから黒褐色の丸薬を取り出して冷蔵庫に常備されていた現地ビールで呑んでみた。
荒かった呼吸が徐々に落ち着いてきた頃、ドアをノックする音がした。あわてて、バスローブをまとい、裸足のままドアを開けると丸山が細い眼で立っていた。
「どうしました?もう、他の人はタクシーで出かけてしまいましたが・・・」
「あっ、扶桑物産のパーティーですか・・・」
忘れていたわけではなかったが、頭の中は下痢でいっぱいだった。
「ここで、待っていますから、すぐ着替えてもらえますか?」
と丸山は視線を土岐の足元と顔の間で二往復させた。
「ちょっと、体調があまりよくないんで、できれば、ここにいたいんですが・・・」
「歩けませんか?」
と感情を押さえ込んだように言いながら、丸山は怪訝そうな顔をする。柔和な表情が消えていた。オブラートに包まれたむき出しの感情を垣間見たような気がした。
「なんとか、歩けないことはないんですが・・・」
「王谷さんが、是非連れてくるようにということなんですが・・・」
と自分の不快感の源が王谷にあることを察して欲しいような目つきをしている。
「業務命令ですか?」
「まあ、そんな大げさなことではないんでしょうけど・・・まあ、いろいろと注文の多い人なんで・・・それから、資料も持ってきてもらえますか」
丸山の言い方にどことなく険があった。王谷となにかあったのかもしれない。
「分かりました。すぐ着替えます」
と土岐は言わざるを得なかった。土岐の知らないところで、丸山はさまざまな無理を強いられているだろうと推察された。土岐もこの程度の無理はせざるを得ないと考えた。
八王子の家を出るとき、
「水が変わると腹の調子が悪くなるよ」
と母に下痢止めを持たされたのを思い出して、スーツケースから黒褐色の丸薬を取り出して冷蔵庫に常備されていた現地ビールで呑んでみた。
荒かった呼吸が徐々に落ち着いてきた頃、ドアをノックする音がした。あわてて、バスローブをまとい、裸足のままドアを開けると丸山が細い眼で立っていた。
「どうしました?もう、他の人はタクシーで出かけてしまいましたが・・・」
「あっ、扶桑物産のパーティーですか・・・」
忘れていたわけではなかったが、頭の中は下痢でいっぱいだった。
「ここで、待っていますから、すぐ着替えてもらえますか?」
と丸山は視線を土岐の足元と顔の間で二往復させた。
「ちょっと、体調があまりよくないんで、できれば、ここにいたいんですが・・・」
「歩けませんか?」
と感情を押さえ込んだように言いながら、丸山は怪訝そうな顔をする。柔和な表情が消えていた。オブラートに包まれたむき出しの感情を垣間見たような気がした。
「なんとか、歩けないことはないんですが・・・」
「王谷さんが、是非連れてくるようにということなんですが・・・」
と自分の不快感の源が王谷にあることを察して欲しいような目つきをしている。
「業務命令ですか?」
「まあ、そんな大げさなことではないんでしょうけど・・・まあ、いろいろと注文の多い人なんで・・・それから、資料も持ってきてもらえますか」
丸山の言い方にどことなく険があった。王谷となにかあったのかもしれない。
「分かりました。すぐ着替えます」
と土岐は言わざるを得なかった。土岐の知らないところで、丸山はさまざまな無理を強いられているだろうと推察された。土岐もこの程度の無理はせざるを得ないと考えた。


