フィジビリティスタディ

と土岐は不平を露わにしたかったが、思いとどまった。相手の感情や都合を考えないで、自分の悪感情をむき出しにする悪い癖を土岐は自覚している。
 金額データは、現地通貨部分と外貨部分に二分されていた。いずれも、現在の為替レートの銭の単位を四捨五入して、日本円に換算されていた。初期投資については、現地通貨部分が十九億八千百三十八万円で、外貨部分が五百四十七億四千四百八十一万円で、合計すると五千六百七十二億二千六百十九万円になっていた。以上が最初の五年間に発生する。六年目から電車が開通するが、それからは毎年維持費と運営費が発生する。プロジェクトの評価期間を三十五年間として、各年の維持費と運営費を年率3%の割引率で現在価値に直し、初期投資の金額と合計すると、九百四十八億円になった。これに対して、中井の乗客数予測に基づいてきのう計算した運賃収入の現在価値は三百六十七億円だった。したがって電化プロジェクトは差し引き、五百八十一億円の赤字となる。誤差の範囲を超えて、このプロジェクトが巨額の財政負担を現地政府に強いることは明らかだった。土岐は、このプロジェクトが頓挫することを確信した。同時に、成功報酬の残額の九十万円が現実味を帯びて、土岐の銀行口座に数歩近寄って来たことを実感した。