と川野が女のようにしなやかな手で、土岐の肩を軽く叩いた。それを合図に、中年組の彼らは作業所を出て行った。それに続いて、童顔の副プロジェクト・マネージャーの吉川がガニ股で体を左右に揺らしながらやってきた。
「私の方も、午前中に南田さんから車両の見積もりを貰うので、午後にはプロジェクト全体の費用の見積もりが出ると思います。あとは、よろしく・・・」
と潰れかけた顎をくしゃくしゃにしながら言う。
O脚の吉川の後姿を見送ってから、土岐は五時まえに帰り支度を始めた。
ホテルに戻り、深夜、寝る前に報告のメールを送信した。送信文を打ち込みながら、南田の胡散臭さを報告すべきかどうか、思案したが、それが自分の主観でしかないことに気づいて、文章にすることを止めた。
@土岐明調査報告書・現地第3日目、8時過ぎ、作業所に到着しました。午前9時ごろ、扶桑物産の現地駐在員である南田に会いました。軌道設計の専門技術者である高橋はコストが安く、この国で資材が調達できるバラスト軌道を採用しようとしていたが、南田はコストが高く、日本からの輸入資材に頼るスラブ軌道を強要しようしました。最終的には、王谷の裁定で、スラブ道床に決定しました。王谷と南田の間には、何らかの共通の利害関係があるような印象を抱きました。プロジェクトの資材は扶桑物産が一手に扱うようで、口銭収入も巨額になるものと予想されます。中井は午後から東欧に向かいました。午後5時すぎ、ホテルに帰着しました。王谷をを除く技術者はずれも単に業務を消化しているような印象があります。以上@
七 現地第4日目
翌日の午前中、土岐は年度別の運賃収入の予測数値をこぎれいな表にまとめた。それをもとにして、縦軸に金額をとり、横軸に年度を目盛って、折れ線グラフを描いた。3%成長だから、実数を縦軸にとると勾配が次第に急に反り上がる右上がりのグラフが描かれる。縦軸を対数目盛にすると、右上がりの直線になる。実質的にはまったく同一のグラフではあるが、見た目の印象は実数を縦軸にとったほうが急増しているように見える。
「増加していることを強調したい場合には実数をとるように、また対数を縦軸にとるのは、増加幅が大きくて、一枚の用紙に収まりきらない場合だ」
と3年前に扶桑総合研究所の鈴村から土岐は教わった。
「私の方も、午前中に南田さんから車両の見積もりを貰うので、午後にはプロジェクト全体の費用の見積もりが出ると思います。あとは、よろしく・・・」
と潰れかけた顎をくしゃくしゃにしながら言う。
O脚の吉川の後姿を見送ってから、土岐は五時まえに帰り支度を始めた。
ホテルに戻り、深夜、寝る前に報告のメールを送信した。送信文を打ち込みながら、南田の胡散臭さを報告すべきかどうか、思案したが、それが自分の主観でしかないことに気づいて、文章にすることを止めた。
@土岐明調査報告書・現地第3日目、8時過ぎ、作業所に到着しました。午前9時ごろ、扶桑物産の現地駐在員である南田に会いました。軌道設計の専門技術者である高橋はコストが安く、この国で資材が調達できるバラスト軌道を採用しようとしていたが、南田はコストが高く、日本からの輸入資材に頼るスラブ軌道を強要しようしました。最終的には、王谷の裁定で、スラブ道床に決定しました。王谷と南田の間には、何らかの共通の利害関係があるような印象を抱きました。プロジェクトの資材は扶桑物産が一手に扱うようで、口銭収入も巨額になるものと予想されます。中井は午後から東欧に向かいました。午後5時すぎ、ホテルに帰着しました。王谷をを除く技術者はずれも単に業務を消化しているような印象があります。以上@
七 現地第4日目
翌日の午前中、土岐は年度別の運賃収入の予測数値をこぎれいな表にまとめた。それをもとにして、縦軸に金額をとり、横軸に年度を目盛って、折れ線グラフを描いた。3%成長だから、実数を縦軸にとると勾配が次第に急に反り上がる右上がりのグラフが描かれる。縦軸を対数目盛にすると、右上がりの直線になる。実質的にはまったく同一のグラフではあるが、見た目の印象は実数を縦軸にとったほうが急増しているように見える。
「増加していることを強調したい場合には実数をとるように、また対数を縦軸にとるのは、増加幅が大きくて、一枚の用紙に収まりきらない場合だ」
と3年前に扶桑総合研究所の鈴村から土岐は教わった。


