(プレゼンテーションのときに、予測額の増加率についての質問が出ればそのように答えるしかない)
とそんなようなことを自問自答しながら、土岐は作業を進めた。
四時を過ぎたころに、三十年間のキャッシュ・インフローの予測が出たので、その金額を3%の割引率で割り引いてみた。運賃収入が3%で増加することを想定しているので、その金額を3%で割り引けば、複利計算で、各年の運賃収入は初年度と同額になる。各年について割引計算するまでもなく、初年度の金額を三十倍したものが、このプロジェクトの三十年間の収入の現在価値になる。とりあえずは、この金額がベンチマークとなる。この金額をどのような理由をつけて増加させるかがフィナンシャル・アナリシス・スペシャリストとしての土岐の腕の見せ所になる。しかし、プロジェクトを破綻させるためには収入予測を減らすことも視野に入れなければならない。
その作業を終えて、あくびをしながら大きく伸びをしていると、丸山が土岐のワークシートをのぞき込んできた。数字の意味を聞かれたので、ひとつひとつ丁寧に答えた。
「割引率ってなんですか?」
その概念をシビル・エンジニアの丸山が知らないことは、土岐にとっては新鮮な驚きだった。
「このベンチマークでは、割引率を3%にしてあるんですが、例えば市場金利が3%で現在の百万円を1年間運用すれば、1年後には元利合計で百三万円になるでしょ」
と土岐が言うと、丸山は、だからなんだと言いたげに土岐の顔をのぞき込む。
「だから、現在の百万円は市場金利3%の時には、1年後の百三万円に価値的に等しいと考えるんです。だから、逆に1年後の百三万円を現在の時点で評価すると百万円ということになる。このとき、百三万円を百万円に割引く率を割引率というんです。さらに、一年後の百三万円の現在価値は百万円だと言うんです」
と説明をしながら、手付金十万円と残額九十万円、総額百万円の報酬が土岐の脳裏に浮かんだ。
丸山が頷く。
「なるほど、そう言われれば、いま百万円くれると言うのと、一年後百万円くれると言うのであれば、誰でも、
『いまくれ』
と言うわけだ。それが、いまの百万円と一年後の百三万円なら、金利が3%なら、同じということか」
とそんなようなことを自問自答しながら、土岐は作業を進めた。
四時を過ぎたころに、三十年間のキャッシュ・インフローの予測が出たので、その金額を3%の割引率で割り引いてみた。運賃収入が3%で増加することを想定しているので、その金額を3%で割り引けば、複利計算で、各年の運賃収入は初年度と同額になる。各年について割引計算するまでもなく、初年度の金額を三十倍したものが、このプロジェクトの三十年間の収入の現在価値になる。とりあえずは、この金額がベンチマークとなる。この金額をどのような理由をつけて増加させるかがフィナンシャル・アナリシス・スペシャリストとしての土岐の腕の見せ所になる。しかし、プロジェクトを破綻させるためには収入予測を減らすことも視野に入れなければならない。
その作業を終えて、あくびをしながら大きく伸びをしていると、丸山が土岐のワークシートをのぞき込んできた。数字の意味を聞かれたので、ひとつひとつ丁寧に答えた。
「割引率ってなんですか?」
その概念をシビル・エンジニアの丸山が知らないことは、土岐にとっては新鮮な驚きだった。
「このベンチマークでは、割引率を3%にしてあるんですが、例えば市場金利が3%で現在の百万円を1年間運用すれば、1年後には元利合計で百三万円になるでしょ」
と土岐が言うと、丸山は、だからなんだと言いたげに土岐の顔をのぞき込む。
「だから、現在の百万円は市場金利3%の時には、1年後の百三万円に価値的に等しいと考えるんです。だから、逆に1年後の百三万円を現在の時点で評価すると百万円ということになる。このとき、百三万円を百万円に割引く率を割引率というんです。さらに、一年後の百三万円の現在価値は百万円だと言うんです」
と説明をしながら、手付金十万円と残額九十万円、総額百万円の報酬が土岐の脳裏に浮かんだ。
丸山が頷く。
「なるほど、そう言われれば、いま百万円くれると言うのと、一年後百万円くれると言うのであれば、誰でも、
『いまくれ』
と言うわけだ。それが、いまの百万円と一年後の百三万円なら、金利が3%なら、同じということか」


