「土岐さん、このプロジェクト・チームは寄せ集めなんですよ。みなさん、民間企業に本籍をお持ちで、今回は、外務省の外郭団体のそれぞれの部署から来ていただいています。こういう編成は特殊なケースでなくって、フィージビリティ・スタディはうちの会社が元請けなんですが、うちの会社にはジェネラリストしかいないので、いつも専門の方は、こんな感じで外部にお願いしています」
「まあ、わたしら、派遣社員みたいなもんですよ。・・・いやあ、プロジェクト単位の仕事請負だから、フリーターみたいなもんかな」
と言いながら、松山は自嘲気味に鼻先で淡白に笑った。笑い方がどこかぎこちなかった。しかし技術者の朴訥さがじかに伝わってきた。人を見る目のない土岐でも、松山という人間に裏表のないらしいことが、なんとなく分かった。
昼食後、土岐は作業所に戻ってから、中井の予測データと国鉄の運賃データをもとにして、運賃収入予測を行った。作業自体は、中井の乗客数の予測データに距離別の現行運賃を掛け合わせるだけで、表計算ソフトを用いた至極単純な作業だった。
中井のデータに運賃を掛けると、乗客運賃収入が全体の7割で、残りの3割は貨物輸送収入になった。この比率は開業から三十年後の最後の予測時まで維持されている。中井の予測では、乗客数も貨物輸送量も年率3%の定率で増加していた。これに、現行運賃をそのまま掛ければ、運賃収入も定率の3%で増加することになる。最後の年には現在の二倍半程度になった。日本の戦後の高度経済成長を含めた経験を考えれば、それほど無理な数値ではないように思われる。むしろ、保守的な予測という評価ができる。しかし、中井の予測に関する説明からは成長率3%の根拠は読み取れなかった。だからといって、中井を責めることはできない。この種の長期予想については、どのような場合でも明確な根拠を示すことは難しい。しいて、根拠を示すとすれば、先進国の経験以外にはない。ある国にできたこと、または起こったことは、他の国でもやろうと思えばできる、または起こるはずだという考え方だ。もちろん、マクロ経済モデルを構築し、労働力や資本量や技術水準を長期的に予測し、マクロ経済の規模を推計した上で、乗客数を予測するという方法も考えられる。しかし、手間隙の掛かるわりにその精度は直感によるものと比較してもそれほど高くはない。
「まあ、わたしら、派遣社員みたいなもんですよ。・・・いやあ、プロジェクト単位の仕事請負だから、フリーターみたいなもんかな」
と言いながら、松山は自嘲気味に鼻先で淡白に笑った。笑い方がどこかぎこちなかった。しかし技術者の朴訥さがじかに伝わってきた。人を見る目のない土岐でも、松山という人間に裏表のないらしいことが、なんとなく分かった。
昼食後、土岐は作業所に戻ってから、中井の予測データと国鉄の運賃データをもとにして、運賃収入予測を行った。作業自体は、中井の乗客数の予測データに距離別の現行運賃を掛け合わせるだけで、表計算ソフトを用いた至極単純な作業だった。
中井のデータに運賃を掛けると、乗客運賃収入が全体の7割で、残りの3割は貨物輸送収入になった。この比率は開業から三十年後の最後の予測時まで維持されている。中井の予測では、乗客数も貨物輸送量も年率3%の定率で増加していた。これに、現行運賃をそのまま掛ければ、運賃収入も定率の3%で増加することになる。最後の年には現在の二倍半程度になった。日本の戦後の高度経済成長を含めた経験を考えれば、それほど無理な数値ではないように思われる。むしろ、保守的な予測という評価ができる。しかし、中井の予測に関する説明からは成長率3%の根拠は読み取れなかった。だからといって、中井を責めることはできない。この種の長期予想については、どのような場合でも明確な根拠を示すことは難しい。しいて、根拠を示すとすれば、先進国の経験以外にはない。ある国にできたこと、または起こったことは、他の国でもやろうと思えばできる、または起こるはずだという考え方だ。もちろん、マクロ経済モデルを構築し、労働力や資本量や技術水準を長期的に予測し、マクロ経済の規模を推計した上で、乗客数を予測するという方法も考えられる。しかし、手間隙の掛かるわりにその精度は直感によるものと比較してもそれほど高くはない。


