「それは、それ。このプロジェクトはACIの責任でやるので、子々孫々まで恥ずかしくない工法にしてもらえませんか。確かに、現在この国の人件費は安いでしょう。しかし、中国だってインドだって、経済成長と共に人件費が上がっているでしょう。いまじゃ、日本の現地工場が中国からベトナムあたりに移転しているって言うじゃないですか。まだ、財務分析もやっていないし、・・・スラブでやっても、十分ペイするかもしれないでしょ。それに点検の指導は日本人がやらなきゃならないんで、ソフトも含めて考えれば、ソフトのいらない、いいハードを入れた方がかえって安くつくかもしれないでしょ。・・・まあ、安けりゃいいってもんでもないし・・・」
「それは、まあ、そうですが・・・」
と高橋が渋面を作る傍らで、南田が密かにほくそえんでいる。高橋は短い腕を組んで、考え込んでいる。その思考を急かせるようにコンクリートの床をぺたぺたと叩く音がする。南田の右足のサンダルが、小刻みに上下する踵と床面の間を往復しながら音を立てていた。
王谷は、
「これでいいですね」
というように湛然とした目で南田に合図した。
「まあ、財務分析によっちゃあ、値引きに応じますから・・・なんてったって、日本製が世界一ですよ。新幹線なんか人身事故ゼロですからね。世界に冠たるモノですよ」
と南田は籐椅子を軋ませて、そっくり返って同意を求めるように後ろに立っている土岐を見上げた。
王谷は自分の机に戻ったが、高橋のぼやきは止まらなかった。
「丸山さん、現在の狭軌を広軌にすることは決定済みだから、バラストをやめて、スラブにするとなると大変な土木工事になりますよ」
「まあ、そうでしょうね。道床をあらたに敷設しなきゃならないですからね」
と言いながら丸山が歩み寄ってきた。南田は丸山が何を言い出すのかとなんとなく恐々としているように見える。
「でも、スラブの方が軽いので路盤に掛かる重量負担が小さいので、橋や盛り土の補強をそれほどしなくてもすむと思いますよ。スラブに決定するということであれば、ぼくの方も、補強見積もりをすこし削ることにします。もっとも、スラブにしたコストアップをカバーし切れないとは思いますが・・・」
と言う丸山の話の前半で南田は口をM字に歪めてにんまりしていたが、話の後半で元に戻った。百面相のように表情の豊かな男だった。
「それは、まあ、そうですが・・・」
と高橋が渋面を作る傍らで、南田が密かにほくそえんでいる。高橋は短い腕を組んで、考え込んでいる。その思考を急かせるようにコンクリートの床をぺたぺたと叩く音がする。南田の右足のサンダルが、小刻みに上下する踵と床面の間を往復しながら音を立てていた。
王谷は、
「これでいいですね」
というように湛然とした目で南田に合図した。
「まあ、財務分析によっちゃあ、値引きに応じますから・・・なんてったって、日本製が世界一ですよ。新幹線なんか人身事故ゼロですからね。世界に冠たるモノですよ」
と南田は籐椅子を軋ませて、そっくり返って同意を求めるように後ろに立っている土岐を見上げた。
王谷は自分の机に戻ったが、高橋のぼやきは止まらなかった。
「丸山さん、現在の狭軌を広軌にすることは決定済みだから、バラストをやめて、スラブにするとなると大変な土木工事になりますよ」
「まあ、そうでしょうね。道床をあらたに敷設しなきゃならないですからね」
と言いながら丸山が歩み寄ってきた。南田は丸山が何を言い出すのかとなんとなく恐々としているように見える。
「でも、スラブの方が軽いので路盤に掛かる重量負担が小さいので、橋や盛り土の補強をそれほどしなくてもすむと思いますよ。スラブに決定するということであれば、ぼくの方も、補強見積もりをすこし削ることにします。もっとも、スラブにしたコストアップをカバーし切れないとは思いますが・・・」
と言う丸山の話の前半で南田は口をM字に歪めてにんまりしていたが、話の後半で元に戻った。百面相のように表情の豊かな男だった。


