「でも・・・財務副部長のシュトゥーバのブリーフィングでは、できるだけコストを押さえてくれということだったんで、バラスト軌道の設計にしたんですよ。バラストであれば、枕木も砂利も現地調達ができるんで、かなり安くあがるでしょ。道床も現在のディーゼル機関車のものをそのまま使えるし・・・スラブ軌道だと、・・・この見積もりだと、路盤コンクリートと軌道スラブを輸入することになっているけど、輸送費を考えると現地生産したほうが安上がりじゃないですか?」
そこで南田は必要以上に首を捻って腕組みをした。
「さあ、その辺がどうですかね。庭先にコンクリートを打つのと、訳が違いますからね。路盤コンクリートには軌道スラブを固定するための突起が必要ですよね。現地の業者をあたってみたんですが、そんな技術のありそうなのはなかったですよ」
そのとき土岐の右肩が指先で突っつかれた。振り向くとニ三歩後ろで丸山が指招きをしている。何事かと目で訊ねると、土岐の腕を引っ張って後ずさりさせ、右耳に口を寄せてきた。
「業者をあたったなんて、はったりですよ」
とかすかに聞こえるようなかすれ声で丸山が言う。
土岐はあらためて高橋と南田の会話に耳を向けた。
「んーん、だから、そのへんの調整をモルタルでやるわけでしょ」
と高橋は承服しかねるように言う。南田と高橋の会話にはオブラートに包まれたような棘が聞き取れた。南田は高橋の決断を促すように机の上に指を立て、苛立ったように爪の先で小刻みに叩いている。それを聞きつけて、プロジェクト・マネージャーの王谷が神妙な面持ちでおもむろにやってきた。先刻からタバコをすいながら窓の外を茫然と眺めていたようだったが、二人のやり取りをずっと聞いていたらしい。
「どうしたの?高橋さん」
と言う王谷の慇懃な話し方にはかすかな威圧と尊大さが感じられる。
「いやあ、軌道をスラブにするか、バラストにするか、・・・わたしはコスト面ではバラストのほうがいいと思うんですが・・・点検の手間はかかりますが、この国の人件費は知れてますし、失業者も多いようなので・・・」
と高橋は年のワリには豊かな頭髪を指で掻き揚げながら、申し訳なさそうに言う。その技術者の良心に迫力がない。
そこで南田は必要以上に首を捻って腕組みをした。
「さあ、その辺がどうですかね。庭先にコンクリートを打つのと、訳が違いますからね。路盤コンクリートには軌道スラブを固定するための突起が必要ですよね。現地の業者をあたってみたんですが、そんな技術のありそうなのはなかったですよ」
そのとき土岐の右肩が指先で突っつかれた。振り向くとニ三歩後ろで丸山が指招きをしている。何事かと目で訊ねると、土岐の腕を引っ張って後ずさりさせ、右耳に口を寄せてきた。
「業者をあたったなんて、はったりですよ」
とかすかに聞こえるようなかすれ声で丸山が言う。
土岐はあらためて高橋と南田の会話に耳を向けた。
「んーん、だから、そのへんの調整をモルタルでやるわけでしょ」
と高橋は承服しかねるように言う。南田と高橋の会話にはオブラートに包まれたような棘が聞き取れた。南田は高橋の決断を促すように机の上に指を立て、苛立ったように爪の先で小刻みに叩いている。それを聞きつけて、プロジェクト・マネージャーの王谷が神妙な面持ちでおもむろにやってきた。先刻からタバコをすいながら窓の外を茫然と眺めていたようだったが、二人のやり取りをずっと聞いていたらしい。
「どうしたの?高橋さん」
と言う王谷の慇懃な話し方にはかすかな威圧と尊大さが感じられる。
「いやあ、軌道をスラブにするか、バラストにするか、・・・わたしはコスト面ではバラストのほうがいいと思うんですが・・・点検の手間はかかりますが、この国の人件費は知れてますし、失業者も多いようなので・・・」
と高橋は年のワリには豊かな頭髪を指で掻き揚げながら、申し訳なさそうに言う。その技術者の良心に迫力がない。


