「わかりました。明日、三本彼にあげることにします」
土岐はタクシーに揺られながら手付金十万円で依頼された密偵のことを丸山に言いだしそうになった。丸山がODAを食い物にしている首謀者のようには土岐には思われなかった。しかし丸山にそのことを相談すれば、彼の口を通して、首謀者の耳に入り、密偵の使命を果たせなくなる可能性がある。丸山は悪い人間のようには見えないが、おしゃべりだ。土岐が電化プロジェクトを否定するような報告書を書かなければ、成功報酬としての残りの九十万円はもらえなくなるかもしれない。土岐はその九十万円に強い執着を覚えていた。
タクシーからホテルの明かりが見え始めたとき、土岐はシュトゥーバのポジションについて丸山に確認した。
「かれは、・・・シュトゥーバは今回のプロジェクトでどういう位置にあるんでしょうか?」
「位置って、・・・?」
「ようするに、かれの・・・プロジェクトへのかかわりかたというか、許認可権というか、姿勢というか、賛否と言うか、利害関係と言うか」
「まあ、かれとはまだ突っ込んだ議論はしていないんですが、・・・ぼくの印象としては、ニュートラルというか、是々非々というか、・・・まあ、政治家ではないですね。利権をあさるという素振りもないし、・・・いうなれば、学究肌なのかな・・・清廉潔白というよりも真実に忠実な・・・頭が固いというか、まあ、日本の官僚にはいないタイプですね」
と丸山にしては確信がないような口ぶりだった。
土岐はホテルに戻ってから、深夜、報告と問い合わせのメールを、
〈Kakusifile〉
あてに送信した。
土岐はタクシーに揺られながら手付金十万円で依頼された密偵のことを丸山に言いだしそうになった。丸山がODAを食い物にしている首謀者のようには土岐には思われなかった。しかし丸山にそのことを相談すれば、彼の口を通して、首謀者の耳に入り、密偵の使命を果たせなくなる可能性がある。丸山は悪い人間のようには見えないが、おしゃべりだ。土岐が電化プロジェクトを否定するような報告書を書かなければ、成功報酬としての残りの九十万円はもらえなくなるかもしれない。土岐はその九十万円に強い執着を覚えていた。
タクシーからホテルの明かりが見え始めたとき、土岐はシュトゥーバのポジションについて丸山に確認した。
「かれは、・・・シュトゥーバは今回のプロジェクトでどういう位置にあるんでしょうか?」
「位置って、・・・?」
「ようするに、かれの・・・プロジェクトへのかかわりかたというか、許認可権というか、姿勢というか、賛否と言うか、利害関係と言うか」
「まあ、かれとはまだ突っ込んだ議論はしていないんですが、・・・ぼくの印象としては、ニュートラルというか、是々非々というか、・・・まあ、政治家ではないですね。利権をあさるという素振りもないし、・・・いうなれば、学究肌なのかな・・・清廉潔白というよりも真実に忠実な・・・頭が固いというか、まあ、日本の官僚にはいないタイプですね」
と丸山にしては確信がないような口ぶりだった。
土岐はホテルに戻ってから、深夜、報告と問い合わせのメールを、
〈Kakusifile〉
あてに送信した。


