金井は土岐に国鉄電化プロジェクトを破綻させるように誘導した。破綻の際には三橋、王谷、白石、西原が大学設置審議会の同窓の委員に口利きをすることを見込んでのことだ。東京政経大学の理事長を東亜クラブの講演会の講師に招聘し、多額の講演料を支払い、土岐を差し替えるように仕向けた。東亜クラブの事業が将来的に先細りになる状況では、金井が大学教員への転職を考えたとしても非難することはできない。それに金井は保険のきかない難病の子どもを養っている。土岐は、
〈Kakusifile〉
の送信者が金井だと断定した。しかし、直接金井と対決して、すべての事を明らかにしようという気持ちにはならなかった。もし立場が逆であれば、自分も金井と同じようなことをしていたような気がしてならないからだ。
中央線の快速に揺られながら、現在の苦境に至った原因を考えてみた。直接的な契機になったのは政権交代だ。これによって公益法人に対する補助金がカットされ、将来的な統廃合の方針が打ち出された。そうでなければ、金井も生活の糧を求めて大学のポストを土岐からかすめ取るために画策しなかっただろう。間接的には土岐の性格がある。上司や同僚や周囲の人たちに対して愛想もなく、おべんちゃらも言えない。組織の人事権を掌握している立場にある人間であれば、自分に対して尻尾を振る人間を重用するのはごく自然だ。土岐は心から尊敬できる人物に対してしか、お追従を言えない。理事長の篠塚に対してなら喜んでこびへつらってもいいと思っているが篠塚は東亜クラブの業務に関しても人事に関しても萩本と金井にまかせっきりた。篠塚は大学の仕事と研究活動で繁忙を極めていた。
八王子駅に着くと、駅前でタクシーに乗った。行き先を言うと、運転手が舌打ちした。病院までの一キロたらずの距離をタクシーを走らせた。タクシーを救急外来の玄関の方に着けさせた。救急外来の受付で要件を言うと、窓口の女性が電話で問い合わせてくれた。
「集中治療室のほうに行ってください。場所は分かりますか?」
土岐は場所も聞かずに、病室に向かって廊下を走りだして、集中治療室の扉を蹴り上げるようにして中に入って行った。さまざまな医療機器が所狭しと林立している中で、若い当直の担当医が茫然と立ち尽くし、心電図モニターのフラットな水平線を見つめていた。
〈Kakusifile〉
の送信者が金井だと断定した。しかし、直接金井と対決して、すべての事を明らかにしようという気持ちにはならなかった。もし立場が逆であれば、自分も金井と同じようなことをしていたような気がしてならないからだ。
中央線の快速に揺られながら、現在の苦境に至った原因を考えてみた。直接的な契機になったのは政権交代だ。これによって公益法人に対する補助金がカットされ、将来的な統廃合の方針が打ち出された。そうでなければ、金井も生活の糧を求めて大学のポストを土岐からかすめ取るために画策しなかっただろう。間接的には土岐の性格がある。上司や同僚や周囲の人たちに対して愛想もなく、おべんちゃらも言えない。組織の人事権を掌握している立場にある人間であれば、自分に対して尻尾を振る人間を重用するのはごく自然だ。土岐は心から尊敬できる人物に対してしか、お追従を言えない。理事長の篠塚に対してなら喜んでこびへつらってもいいと思っているが篠塚は東亜クラブの業務に関しても人事に関しても萩本と金井にまかせっきりた。篠塚は大学の仕事と研究活動で繁忙を極めていた。
八王子駅に着くと、駅前でタクシーに乗った。行き先を言うと、運転手が舌打ちした。病院までの一キロたらずの距離をタクシーを走らせた。タクシーを救急外来の玄関の方に着けさせた。救急外来の受付で要件を言うと、窓口の女性が電話で問い合わせてくれた。
「集中治療室のほうに行ってください。場所は分かりますか?」
土岐は場所も聞かずに、病室に向かって廊下を走りだして、集中治療室の扉を蹴り上げるようにして中に入って行った。さまざまな医療機器が所狭しと林立している中で、若い当直の担当医が茫然と立ち尽くし、心電図モニターのフラットな水平線を見つめていた。


