と答えて、土岐は金井の許可を得るために事務室に戻った。金井は丸顔の中央に皺を寄せた渋面で書類を作成していた。土岐は金井の前に立った。
「すいません。いま、母が入院している病院から電話がありまして、すぐ、来てほしいということなんですが・・・」
「白内障の手術ですか?」
「いえ、先週末、自宅で倒れまして、救急搬送して、そのまま入院しています」
「そう」
と金井は渋面のまま、土岐を見上げている。
「早退して結構です。お大事に・・・」
と金井が言い終える前に、土岐は自席に戻り、帰り支度を始めた。
中央線に飛び乗って、八王子に向かう車中で、金井が言った、
「白内障の手術ですか?」
という言葉が気になった。金井が母の病気を知っているということは、土岐が金井に言ったに違いないとは思うが、土岐はそれを思い出せなかった。福原には言った覚えがあった。いつだったか、昼休みに福原と事務室で食事をしながら、
「目が老化すると白内障か、緑内障になるみたいね」
と福原が言ったとき、
「母が白内障なんですよ」
と言ったような記憶がある。
「早く手術を受けさせないと、悪化するので・・・唯一の趣味がテレビを見ることなんで、早く直してやりたいんですけど、・・・でも、いま、お金がなくて」
というようなことを言った可能性がある。そのとき金井は自席にいたかもしれない。金井はいつも昼食を1時近くにとる。地下の食堂街に出かけるのだが、混雑を嫌って土岐や福原と同じ時間帯には食事をしない。あるいは福原が何かの折にそのことを金井に話したとすれば、金井が母の白内障を知っていたとしてもおかしくはない。
「すいません。いま、母が入院している病院から電話がありまして、すぐ、来てほしいということなんですが・・・」
「白内障の手術ですか?」
「いえ、先週末、自宅で倒れまして、救急搬送して、そのまま入院しています」
「そう」
と金井は渋面のまま、土岐を見上げている。
「早退して結構です。お大事に・・・」
と金井が言い終える前に、土岐は自席に戻り、帰り支度を始めた。
中央線に飛び乗って、八王子に向かう車中で、金井が言った、
「白内障の手術ですか?」
という言葉が気になった。金井が母の病気を知っているということは、土岐が金井に言ったに違いないとは思うが、土岐はそれを思い出せなかった。福原には言った覚えがあった。いつだったか、昼休みに福原と事務室で食事をしながら、
「目が老化すると白内障か、緑内障になるみたいね」
と福原が言ったとき、
「母が白内障なんですよ」
と言ったような記憶がある。
「早く手術を受けさせないと、悪化するので・・・唯一の趣味がテレビを見ることなんで、早く直してやりたいんですけど、・・・でも、いま、お金がなくて」
というようなことを言った可能性がある。そのとき金井は自席にいたかもしれない。金井はいつも昼食を1時近くにとる。地下の食堂街に出かけるのだが、混雑を嫌って土岐や福原と同じ時間帯には食事をしない。あるいは福原が何かの折にそのことを金井に話したとすれば、金井が母の白内障を知っていたとしてもおかしくはない。


