「投資家と言いますと、株主ですか?」
「それがメインですが、これから株主になっていただきたい投資家向けにも情報を郵送しています」
「これから株主になってもらいたい投資家と言うと、どういう人ですか?」
「プロの場合は、ファンド・マネージャーや証券アナリスト、大企業の資金運用部の人とか、単純に資料を請求してくる一般投資家とか・・・たぶん、すでに株主になっている人向けには信託銀行に資料配布を委託しているので、この封筒は、株主以外ということになろうかと思います」
「株主以外と言う場合、何通ぐらいになるんですか?」
「今年の場合ですか?」
「ええ」
「わが社は決算が三月期なので、昨年度の財務諸表をまとめたのが、五月ごろで、資料配布が六月からだから、まだ、四半期しか発送していないので、多分、せいぜい千通程度じゃないでしょうか」
千通という言葉を聞いて、土岐は一瞬めまいを覚えた。
「全国に配送されたわけですよね」
「まあ、そうですけど、都内が殆どです。ほら、この封筒に窓口がありますよね。ここから宛先が見えるようにして郵送するんですが、・・・」
「配送先のリストを見せていただくわけにはいかないですよね」
と土岐が言うと、女は軽く目を剥いた。土岐も言った後で、後悔した。
「それはちょっと・・・どういう事情でお知りになりたいんですか?」
「個人的なことで・・・どうも、お忙しい所、すいませんでした」
東亜クラブには少し遅刻して着いた。咎める人はいなかった。自席についてから、フリーメールを提供しているポータルサイトから、ユーザ名、
〈Kakusifile〉
で登録してみた。このユーザ名が使用されていなければ、登録できるはずだった。すんなり、登録できた。かりに、このアドレスが誰かとの交信に使用されていたとすれば、メールを盗み読みすることができるかもしれない。ためしに、有料契約のプロバイダーから貰ったメールアドレスを使って、
〈Kakusifile〉
あてに、空メールを送信してみた。少し時間を要したが、フリーメールアドレスに着信した。
昼過ぎ、マナーモードの土岐の携帯電話が机の上で激しく蠕動した。土岐は携帯電話を持って廊下に出た。
「土岐さんの携帯ですか?」
「はい、そうです」
「おかあさんの容態が急変したので、こちらに至急来ていただけますか」
「はい」
「それがメインですが、これから株主になっていただきたい投資家向けにも情報を郵送しています」
「これから株主になってもらいたい投資家と言うと、どういう人ですか?」
「プロの場合は、ファンド・マネージャーや証券アナリスト、大企業の資金運用部の人とか、単純に資料を請求してくる一般投資家とか・・・たぶん、すでに株主になっている人向けには信託銀行に資料配布を委託しているので、この封筒は、株主以外ということになろうかと思います」
「株主以外と言う場合、何通ぐらいになるんですか?」
「今年の場合ですか?」
「ええ」
「わが社は決算が三月期なので、昨年度の財務諸表をまとめたのが、五月ごろで、資料配布が六月からだから、まだ、四半期しか発送していないので、多分、せいぜい千通程度じゃないでしょうか」
千通という言葉を聞いて、土岐は一瞬めまいを覚えた。
「全国に配送されたわけですよね」
「まあ、そうですけど、都内が殆どです。ほら、この封筒に窓口がありますよね。ここから宛先が見えるようにして郵送するんですが、・・・」
「配送先のリストを見せていただくわけにはいかないですよね」
と土岐が言うと、女は軽く目を剥いた。土岐も言った後で、後悔した。
「それはちょっと・・・どういう事情でお知りになりたいんですか?」
「個人的なことで・・・どうも、お忙しい所、すいませんでした」
東亜クラブには少し遅刻して着いた。咎める人はいなかった。自席についてから、フリーメールを提供しているポータルサイトから、ユーザ名、
〈Kakusifile〉
で登録してみた。このユーザ名が使用されていなければ、登録できるはずだった。すんなり、登録できた。かりに、このアドレスが誰かとの交信に使用されていたとすれば、メールを盗み読みすることができるかもしれない。ためしに、有料契約のプロバイダーから貰ったメールアドレスを使って、
〈Kakusifile〉
あてに、空メールを送信してみた。少し時間を要したが、フリーメールアドレスに着信した。
昼過ぎ、マナーモードの土岐の携帯電話が机の上で激しく蠕動した。土岐は携帯電話を持って廊下に出た。
「土岐さんの携帯ですか?」
「はい、そうです」
「おかあさんの容態が急変したので、こちらに至急来ていただけますか」
「はい」


