フィジビリティスタディ

 月曜日の早朝、駅前の病院に立ち寄った。ナースステーションで母の容態を確認した。まだ集中治療室にいて、主治医が出勤していないので、詳細は昼ごろ分るとのことだった。それから東亜クラブに向かった。途中、新橋駅で降りた。日比谷通りへ出て、日比谷公園に向かって左側の小さなビルに竹内工務店の本社はあった。正面玄関の奥に、受付があったが、誰もいなかった。受付の奥に守衛室があり、小さな窓口が空いていた。土岐は守衛に声をかけた。
「すいません。ちょっとおたずねしたいんですが・・・」
 窓口から剥げ頭が首を出した。
「まだ、本社の勤務時間は始まっていませんけど・・・」
「いえ、この封筒について、お聞きしたいんですが・・・」
 土岐は守衛に封筒を差し出した。守衛は封筒を手にとって、
「これがなにか?」
と言いたげに土岐の顔を見上げる。
「その封筒、何に使われたか分かる人はいないでしょうか?」
「たぶん、これは総務だな」
と守衛はひとり言のように言う。
「ちょっと、総務に聞いてみましょうか?もう、誰か来ていると思うんで・・・」
と言いながら守衛はプッシュフォンのボタンを押す。
「あ、総務ですか?どなたか、封筒のことについて分かる方、いますか?・・・そうですか、ちょっと、来客で、なにか、わが社の封筒について、お聞きしたいことがあるとかで・・・ええ、それじゃ、お待ちしています」
と受話器を置いて、土岐に封筒を返却しながら言う。
「いま、これから総務の人が、こちらに降りてきますので・・・」
 それから数分して、キャリアウーマン風のOLが守衛室に近づいてきた。
「こちらの方?」
と土岐を指差す。土岐は、その女性に頭を下げた。
「すみません。朝早く・・・」
「なんでしょうか?」
と言いながら、土岐の姿かたちを素早く品定めしている。女の目が土岐の手にある封筒を見ている。
「御社のこの封筒なんですが、何に使われたかわかりますか?」
 土岐が差し出した封筒を女は手にとって、表と裏をしげしげと眺めている。
「これは、2次使用されてますね。宅配便で使用したみたいですが、この封筒の左上に、
〈ゆうメール〉
というのが印刷されていますよね。多分これは、IRで使ったものだと思います」
「IRと言いますと?」
「インベスターズ・リレーション・・・つまり、投資家向けの情報の発送用に使ったものだと思います」