フィジビリティスタディ

「ここでは、そのまま入力するんで、他のコンビニから来たものと一緒になるから、伝票を見れば確認できるけど、パソコンに入力しちゃうと、伝票を整理していないんで、・・・」
「分からないということですか?」
「いいえ、ほかのコンビニで受け付けていないと言うのなら、ここしかないでしょ」
「そうですか・・・ひと月くらい前なんですが、この封筒を持参した人を覚えていませんか」
 女事務員は封筒をちらりと見て、呆れたような顔付きをする。
「さあ、事務をやっているのは私一人じゃないし、持ち込んだお客さんの顔はいちいち覚えようとはしないし・・・」
「でも、直接持参する人は少ないんでしょ」
「少ないと言っても、そこそこにはあるんで」
「この封筒は竹内工務店のものですが、投函した人の記録はありませんか?」
「レター便の場合、差出人の記名は必要じゃないんで・・・一応、宛名と差出住所が分かれば受け付けています。その封筒の場合、一応、竹内工務店が差出人ということになりますね」
と言いながら事務員は伝票処理をし始めた。土岐はそれ以上追及することを諦めた。
(もし、この封筒の受け取りを拒否していたら、封筒は竹内工務店に返却される。投函者はそういう可能性はないとふんでいたのだ。留守であろうとなかろうと、郵便受けに投函するから、宛名人が受け取り拒否する場合以外に、竹内工務店に配送物が返還されることはないということだ)
 後味の悪い結末だった。消去法で、あの十万円が新橋センターから投函されたらしいということだけで、そうであるという積極的な証拠はつかめなかった。人物も特定できなかった。疲労感だけが残った。その上、残額の九十万円と経費の十万円の喪失感がその疲労感を増幅させた。
(なぜ、わざわざ新橋の配送センターで投函したのか?コンビニの方が客が多く、かえって人目につかないのではないか?配送センターでなければならない理由が何かあったのか?コンビニで投函してはまずい理由が何かあったのか?いずれにしても、新橋界隈に仕事場のある人物が投函者に違いない。それとも投函者はこの辺の住民か?そうでないとすると、新橋駅からわざわざここまで投函しに来たのか?)
 土岐は自転車をレンタサイクルに返却した後、翌朝、竹内工務店の本社に寄ることにした。

十五 洋上の滴