フィジビリティスタディ

 土岐はメモ用紙を探した。
「何か紙がないかな?」
「いいよ。とりあえず、アドレスを言ってみて・・・」
「kakusifile@***.jp」
と土岐が言うと、素早い返答があった。
「あ、だめ。それ、フリーメールアドレスでしょ。そのポータルサイトを提供しているところは、個人情報のみかえりに、フリーメールアドレスを出しているから、当然、そのアドレスの個人情報を握っているけど、個人情報を守るということを掲示して情報を打ち込ませていることもあるし、なによりも、カネをかけているから、ただじゃ教えてくれないよ」
「いくら出せば、教えてもらえるのかな?」
「そのアドレスだけじゃ売らないよ。パッケージでロット単位で買わないと・・・」
「最低いくらぐらいで買えるんだろうか?」
「買う時は、年齢とか、性別とか、職業とか、住所とか、個人情報を特定化しないと、売る方も売りようがない。たとえば、お前の場合、ユーザ名がkakusifileという人物の情報が欲しいわけだが、それだと目的が特定の個人情報ということになる。お前がその個人情報をどういう目的で使うか知らないが、特定の個人の情報だけを提供すると、提供された個人があとで、
『なんで教えたんだ』
とクレームをつけてくる可能性がある。だから、その情報だけを売るということは絶対しないだろう。それに、そのポータルサイトを提供しているところは、自社で個人情報を十分活用して、採算が取れている筈だから、カネを出すからと言っても、まず、売ることも教えることもしないだろう。カネを払えば、指定した特性の登録者にメールを代理で送信してくれると思うけど・・・特定の個人に、というのは聞いたことがないな。広告メールのようなものなら可能性はあるかも知れないが、私信のようなメールだと、個人情報を提供したことがばれるから、多分だめだろう」
 大浜は相変わらず、キーボードを叩いている。長髪の多いIT業界の関係者としては珍しく、坊主刈りにしている。外回りのやくざのような風貌だ。
 土岐は思案に暮れた。大浜が話すたびに虫唾が走った。もうひと押しする気力が失せていた。土岐は、十万円が送られてきた宅配便の線から、
〈Kakusifile〉
の主を探すことにして、早々に大浜の許を辞した。不快さだけが残った。