「いや、明日はちょっと用事がある。今日なら、三時すぎには仕事の区切りがつくけど」
と言われて、土岐は大浜に会いに渋谷まで出向くことにした。大浜は土岐にとって最も好ましくないタイプの人間だった。土岐は相手の立場や心情を全く忖度しない人間が大嫌いだ。大浜はそういう傲岸なタイプの人間だった。
土岐はポケットに現金1万円を入れて配送されてきた竹内工務店の茶封筒を折り畳んでポケットにしまい、渋谷に向かった。
渋谷は学部学生のころには飲み歩いたが、学部を卒業してからは、遠のいた。道玄坂の雑居ビルの店舗は殆どが入れ替わっていた。土岐は途中の洋菓子屋でクッキーの箱を買った。道玄坂をのぼりつめて、飲食店街からはずれたペンシルビルに大浜の会社があった。玄関ロビーが歩道から10センチほど低くなっており、10平米ほどの中途半端な広さのエレベーターホールがあった。大浜は6階にいると言う。6階でエレベーターを降りると、目の前にOHエンタープライズというロゴの入ったドアが目の前にあった。土岐がノックをすると、
「あいてるよ」
という大浜の不遜な声がした。ドアの中には窓沿いに細長い部屋が広がっていた。幅2メートル、長さ10メートル足らずのスペースに、窓沿いに1列、横並びに机が置かれていた。大浜の机だけ、こちら向きにおかれ、顔の下半分がパソコンのディスプレーに隠れていた。
「おう」
と大浜は土岐を一瞥して横柄な声を出す。
「ご無沙汰してます。・・・仕事中どうも・・・」
と土岐が言うと、大浜は激しくキーボードを叩きながら、
「いま、終わるところだ」
と言う。土岐は、部屋の奥に進み、大浜の前の椅子に腰かけた。
「これつまらないものだけど・・・」
と土岐はクッキーの箱の入った包みを大浜の脇に置く。
「どんな用なの?」
と大浜は相変わらずキーを叩きながら、土岐の顔も見ずに言う。
「実は、メールアドレスの主を調べたいんだけど・・・」
大浜は何も答えない。暫時、沈黙が続く。土岐は仕方なく、続ける。
「そのアドレスにメールを送りたいんだけど、アドレスの主がアドレスを抹消したみたいで、メールを送れない。何度やっても、メールを送れなかったというエラーメッセージが出てくる。そこで、なんとか、メールの内容を伝えたいんで、メールアドレスの主を特定する方法を教えてもらえれば、・・・」
「アドレスは?」
と言われて、土岐は大浜に会いに渋谷まで出向くことにした。大浜は土岐にとって最も好ましくないタイプの人間だった。土岐は相手の立場や心情を全く忖度しない人間が大嫌いだ。大浜はそういう傲岸なタイプの人間だった。
土岐はポケットに現金1万円を入れて配送されてきた竹内工務店の茶封筒を折り畳んでポケットにしまい、渋谷に向かった。
渋谷は学部学生のころには飲み歩いたが、学部を卒業してからは、遠のいた。道玄坂の雑居ビルの店舗は殆どが入れ替わっていた。土岐は途中の洋菓子屋でクッキーの箱を買った。道玄坂をのぼりつめて、飲食店街からはずれたペンシルビルに大浜の会社があった。玄関ロビーが歩道から10センチほど低くなっており、10平米ほどの中途半端な広さのエレベーターホールがあった。大浜は6階にいると言う。6階でエレベーターを降りると、目の前にOHエンタープライズというロゴの入ったドアが目の前にあった。土岐がノックをすると、
「あいてるよ」
という大浜の不遜な声がした。ドアの中には窓沿いに細長い部屋が広がっていた。幅2メートル、長さ10メートル足らずのスペースに、窓沿いに1列、横並びに机が置かれていた。大浜の机だけ、こちら向きにおかれ、顔の下半分がパソコンのディスプレーに隠れていた。
「おう」
と大浜は土岐を一瞥して横柄な声を出す。
「ご無沙汰してます。・・・仕事中どうも・・・」
と土岐が言うと、大浜は激しくキーボードを叩きながら、
「いま、終わるところだ」
と言う。土岐は、部屋の奥に進み、大浜の前の椅子に腰かけた。
「これつまらないものだけど・・・」
と土岐はクッキーの箱の入った包みを大浜の脇に置く。
「どんな用なの?」
と大浜は相変わらずキーを叩きながら、土岐の顔も見ずに言う。
「実は、メールアドレスの主を調べたいんだけど・・・」
大浜は何も答えない。暫時、沈黙が続く。土岐は仕方なく、続ける。
「そのアドレスにメールを送りたいんだけど、アドレスの主がアドレスを抹消したみたいで、メールを送れない。何度やっても、メールを送れなかったというエラーメッセージが出てくる。そこで、なんとか、メールの内容を伝えたいんで、メールアドレスの主を特定する方法を教えてもらえれば、・・・」
「アドレスは?」


