「もうしばらく、救急病棟で、一般病棟へは来週の月曜日以降になると思います。月曜日には担当の先生から、説明があると思いますので、来週また来ていただけますか・・・とりあえず、保険証と着替えは預かっておきます。それから、昨夜の、救急費用を会計で清算していただけますか?」
と言いながら、請求書を土岐に渡す。土岐はちらりと請求書に目を落として、
「母に面会できますか?」
と聞いた。
「いま、集中治療室なので、面会はできません。容態は安定しているようです。今日は、いくつか検査をする予定なので、付き添いはとくに必要ありません。月曜日までに、なにかあれば、こちらからご連絡します」
土岐はそのまま救急の会計で昨夜の費用を支払った。土岐の財布が軽くなった。
一旦、自宅に帰り、着信メールをチェックした。
〈Kakusifile〉
からの受信はなかった。このまま連絡が取れなければ、残額の九十万円と現地経費の十万円は入手できなくなる。母の入院費用がいくらかかるか分からないが、土岐の手許には現金が殆どなかった。
土岐はパソコンの画面をぼんやりと眺めながら、大学院の修士のときに知り合った男のことを思い出していた。大浜隆久という。大学院在学中から、システム・エンジニアのアルバイトにのめり込んでいた。途中から教室で見かけなくなった。最後に会ったのは、学生課の窓口で、彼が退学届を提出しに来たときだった。
「退学届を出さないと、除籍だとさ」
と不貞腐れたように言っていた。土岐と同年であったが、土岐を見下したような言い方だった。誰に対しても横柄な物腰で、同級生からも好かれていなかった。自分で自分を傍若無人と評していた。しかし、パソコンのプログラムや様々なソフトについては、教授すら彼に教えを請うほど熟知していた。
(大浜なら、kakusifileの主を追跡出来るかもしれない)
そんな一縷の望みが土岐の古い手帳の住所録をひも解かせた。数年前の携帯電話番号だったが、大浜がでてきた。
「土岐?・・・ああ、大学院のときの・・・」
と鼻先で話す。
「ちょっと、メールのことで、相談したいんだけど、会えるだろうか?」
大浜の口調が、傲慢なトーンに変わる。
「こちとらね、貧乏暇なしで、土曜日も出勤で、・・・」
「明日の日曜日はどうだろう」
と言いながら、請求書を土岐に渡す。土岐はちらりと請求書に目を落として、
「母に面会できますか?」
と聞いた。
「いま、集中治療室なので、面会はできません。容態は安定しているようです。今日は、いくつか検査をする予定なので、付き添いはとくに必要ありません。月曜日までに、なにかあれば、こちらからご連絡します」
土岐はそのまま救急の会計で昨夜の費用を支払った。土岐の財布が軽くなった。
一旦、自宅に帰り、着信メールをチェックした。
〈Kakusifile〉
からの受信はなかった。このまま連絡が取れなければ、残額の九十万円と現地経費の十万円は入手できなくなる。母の入院費用がいくらかかるか分からないが、土岐の手許には現金が殆どなかった。
土岐はパソコンの画面をぼんやりと眺めながら、大学院の修士のときに知り合った男のことを思い出していた。大浜隆久という。大学院在学中から、システム・エンジニアのアルバイトにのめり込んでいた。途中から教室で見かけなくなった。最後に会ったのは、学生課の窓口で、彼が退学届を提出しに来たときだった。
「退学届を出さないと、除籍だとさ」
と不貞腐れたように言っていた。土岐と同年であったが、土岐を見下したような言い方だった。誰に対しても横柄な物腰で、同級生からも好かれていなかった。自分で自分を傍若無人と評していた。しかし、パソコンのプログラムや様々なソフトについては、教授すら彼に教えを請うほど熟知していた。
(大浜なら、kakusifileの主を追跡出来るかもしれない)
そんな一縷の望みが土岐の古い手帳の住所録をひも解かせた。数年前の携帯電話番号だったが、大浜がでてきた。
「土岐?・・・ああ、大学院のときの・・・」
と鼻先で話す。
「ちょっと、メールのことで、相談したいんだけど、会えるだろうか?」
大浜の口調が、傲慢なトーンに変わる。
「こちとらね、貧乏暇なしで、土曜日も出勤で、・・・」
「明日の日曜日はどうだろう」


