フィジビリティスタディ

からのメールはなかった。電化プロジェクトが要望通りに頓挫したことを伝えて、残金の九十万円と現地での領収書不要の調査経費として十万円を請求することにした。
 @電化プロジェクトが流産したという情報を、扶桑総合研究所から入手しました。つきましては、お約束の残金九十万円と現地での調査費として十万円、合計百万円をお支払いいただければ幸いです。お支払方法は手付金と同様で結構です。私事で恐縮ですが、本日、母が急病で入院したため、至急にお支払いいただければ幸甚です。土岐明@
 土岐は必要なことだけを書いて、送信をクリックした。すぐ、警告音がして、
「メッセージは送信されませんでした」
というエラーメッセージが表示された。土岐は、送信済みファイルを開き、アドレスを確認した。
〈Kakusifile〉
と@以降のフリーメールのドメインのスペルを手帳に書き込んだメモと照らし合わせて確認したが、誤りはなかった。土岐はもう一度同じ文面で、メールを送信した。再び、警告音がして、
「メッセージは送信されませんでした」
というエラーメッセージが繰り返された。エラーの理由を確認すると、
「送信先のアドレスがありません」
となっていた。
 土岐は手をキーボードの上において、今起こっていることの意味を考えてみた。
(もう目的を達成したので、アドレスを消去したということなのか?であれば、そのうち、残金は前回と同じ方法で送られてくるということか?しかし、そうであるとすると、現地で使った経費はどうやって請求すればいいのか?そういう申し出をしたことを忘れているのか?それとも、請求書のいらない経費はやはり認められないということか?あるいは、残金の支払いも必要経費も、約束しなかったことにしたいということなのか?)
と考えながら次第に不安になって来た。

 翌日の土曜日の昼近く、土岐は前夜、看護師から手渡されたリストの品目を用意して、バスで病院に向かった。夜は気づかなかったが、病院は河川敷のほとりに立っていた。外来の休診日のせいか、閑散としていた。ナースステーションで昨夜、救急で運び込まれた者の家族だと説明すると、昨夜と違う担当の看護師が応対してくれた。