と金井は慰めるようなことを言ってくれたが、口先だけのことなので、土岐はすこしも嬉しくなかった。今後少子化が進み、大学の新増設はほとんどないというのが、常識になっている。金井もそのことは知っているはずだ。
今年初めての寒波が襲来していたその日の夕方、電話予約を入れて、扶桑総合研究所の鈴村に会いに行った。扶桑総合研究所の求人の状況を知るためだった。ACIの報告書作成依頼の話以降、会ってなかったので、挨拶の意味もあった。
五時半ごろ、受付を通さずに、直接鈴村の机の前に立ち寄ると、鈴村は机の周りをダンボールに放り込んだ報告書や書類に囲まれて、経産省のシンクタンク助成の企画書を書いているところだった。
「お忙しいところ、すみません」
と土岐が詫びを入れると、鈴村は壁に立てかけてあった折りたたみ椅子を出した。
「いやあ、・・・もう帰ろうかと思っていたところだ」
暖房の効きすぎなのか、鈴村は額に薄っすらと汗をかいている。
「ACIの件ではお世話になりました。非常に貴重な経験をさせていただきました」
「うん、そうでしょ。・・・書物の知識が机上の空論だって分かったでしょう」
「そうですね。知らなかったことがいっぱいありました」
と言いながら窓の外をちらりと見ると、晴海通りの夜の帳に広がる電飾の中を通勤帰りの人々が塊になって駅に向かって足早に歩いていた。土岐の心が風に舞う落ち葉のように揺れまどいながら落ち込んでいるせいか、気まずい雰囲気が感じられた。鈴村にいつもの陽気さがない。土岐の方から押しかけてきたので、土岐が用件を切り出すのを鈴村は待っているようだった。なかなか言い出す踏ん切りがつかなかったが、いつもは快活な鈴村が一向に話題を提供してくれないので、土岐は話を切り出さざるを得なかった。
「・・・話は違うんですが、・・・わたし、来年の三月に東亜クラブとの契約が切れるので、求人情報を探しているんですが、心当たりはありませんか?」
と言いながら、内心、扶桑総合研究所の求人に関する情報を聞き出そうと思っていた。
「うちも、来年はこの不況で、求人ゼロだよ。もっとも、・・・砂田君のところの、ACIがらみの仕事が継続されていれば、話は別で、・・・彼の下に、一人くらい、君みたいな人を採ってもいいかなあと、考えてはいたんだが・・・」
今年初めての寒波が襲来していたその日の夕方、電話予約を入れて、扶桑総合研究所の鈴村に会いに行った。扶桑総合研究所の求人の状況を知るためだった。ACIの報告書作成依頼の話以降、会ってなかったので、挨拶の意味もあった。
五時半ごろ、受付を通さずに、直接鈴村の机の前に立ち寄ると、鈴村は机の周りをダンボールに放り込んだ報告書や書類に囲まれて、経産省のシンクタンク助成の企画書を書いているところだった。
「お忙しいところ、すみません」
と土岐が詫びを入れると、鈴村は壁に立てかけてあった折りたたみ椅子を出した。
「いやあ、・・・もう帰ろうかと思っていたところだ」
暖房の効きすぎなのか、鈴村は額に薄っすらと汗をかいている。
「ACIの件ではお世話になりました。非常に貴重な経験をさせていただきました」
「うん、そうでしょ。・・・書物の知識が机上の空論だって分かったでしょう」
「そうですね。知らなかったことがいっぱいありました」
と言いながら窓の外をちらりと見ると、晴海通りの夜の帳に広がる電飾の中を通勤帰りの人々が塊になって駅に向かって足早に歩いていた。土岐の心が風に舞う落ち葉のように揺れまどいながら落ち込んでいるせいか、気まずい雰囲気が感じられた。鈴村にいつもの陽気さがない。土岐の方から押しかけてきたので、土岐が用件を切り出すのを鈴村は待っているようだった。なかなか言い出す踏ん切りがつかなかったが、いつもは快活な鈴村が一向に話題を提供してくれないので、土岐は話を切り出さざるを得なかった。
「・・・話は違うんですが、・・・わたし、来年の三月に東亜クラブとの契約が切れるので、求人情報を探しているんですが、心当たりはありませんか?」
と言いながら、内心、扶桑総合研究所の求人に関する情報を聞き出そうと思っていた。
「うちも、来年はこの不況で、求人ゼロだよ。もっとも、・・・砂田君のところの、ACIがらみの仕事が継続されていれば、話は別で、・・・彼の下に、一人くらい、君みたいな人を採ってもいいかなあと、考えてはいたんだが・・・」


