と言いたげな専務理事のさげすみの目つきが記憶に残っている。土岐は土岐で、午前十時過ぎにハイヤーでやってきて、午前中一杯新聞や雑誌を読んで、十二時過ぎると昼食に出かけ、午後二時ごろに帰ってくるとパソコンでメールを打ったり、ネットサーフィンをやったりし、午後四時過ぎにはハイヤーで帰宅する専務理事と話をするとき、敬意を表すことは極力しなかった。決して非礼な言動はとらなかったが、言葉の端々や表情の取り繕いで、土岐が専務理事を尊敬していないことは、察知していただろうと思う。権力を持つ人間に対して、心の底から敬意を表している言動を取らなければ、なんらかの報復があるであろうことは想像できたが、心にもない敬意を表することは土岐にはできなかった。媚びへつらうことすらもしなかった。そういう態度を尊大と受取られても仕方がないのかもしれない。一流国立大学卒の自負をもっている専務理事が、そういう土岐のような二流私立大学卒の部下に対して、便宜を図ることをしないであろうことは理解できた。
「それは承知しています。わたしの契約は単年度契約ですから・・・」
とざわざわと怒涛のように波打つ激情を抑えながら震える声で言った。
「申し訳ないね。まだ確定したわけじゃないけど、直前になって言っても、すぐにつぎのポジションが見つかるというわけじゃないから・・・まあ、早めに言っておいた方が、君も準備できるだろうし・・・私もアンテナを張って、君に適当なポストがないかどうか、気をつけていようと思うけど・・・扶桑総研の方はどうなんだろう?」
「声を掛けられてはいませんが、一応、当たってみます。・・・どうも長い間有り難うございました」
「いや、まだ確定したわけじゃないんで・・・それから、専務理事にお願いしたんだけど、今回の扶桑総研から振り込まれた金額は、来年の三月に慰労金ということで、そっくり君に渡そうということになりましたから・・・」
と言う金井の歯切れが急によくなった。
「そうですか、いろいろと気を遣っていただいて、すみません」
と礼を言わざるを得なかった。
「まあ、君は私と違ってまだ若いし、なんといっても本当の研究者だから、いずれきちんとした大学のポストが見つかるでしょう」
「それは承知しています。わたしの契約は単年度契約ですから・・・」
とざわざわと怒涛のように波打つ激情を抑えながら震える声で言った。
「申し訳ないね。まだ確定したわけじゃないけど、直前になって言っても、すぐにつぎのポジションが見つかるというわけじゃないから・・・まあ、早めに言っておいた方が、君も準備できるだろうし・・・私もアンテナを張って、君に適当なポストがないかどうか、気をつけていようと思うけど・・・扶桑総研の方はどうなんだろう?」
「声を掛けられてはいませんが、一応、当たってみます。・・・どうも長い間有り難うございました」
「いや、まだ確定したわけじゃないんで・・・それから、専務理事にお願いしたんだけど、今回の扶桑総研から振り込まれた金額は、来年の三月に慰労金ということで、そっくり君に渡そうということになりましたから・・・」
と言う金井の歯切れが急によくなった。
「そうですか、いろいろと気を遣っていただいて、すみません」
と礼を言わざるを得なかった。
「まあ、君は私と違ってまだ若いし、なんといっても本当の研究者だから、いずれきちんとした大学のポストが見つかるでしょう」


