(おそらく、シュトゥーバはぼくを非難するだろう。非難して、その後、どうするか?約束を果たすようにと、メールでも送信してくるか?それとも、黙ったままぼくに対して恨みを抱き続けるか?あるいは、抗議のメールをACI宛に送信してくるか?そうしたとしても、ACIはそのメールを握りつぶすか、適当な返信メールでお茶を濁すだろう。それよりも何よりも、このままでは実質的にぼくのレポートは組織の論理に押しつぶされたことになる。それは単にACIという一企業だけではない、官僚組織に牛耳られている国家の論理とODAに群がる産業界の論理でもある。それらに単年度契約の芥子粒のような財団法人の一研究員が、徒手空拳で逆らうことに何の意味があるのか?・・・しかし、営利企業に就職しなかったのは、そうした組織の論理に真理に基づく信念を曲げられるのを忌避したかったからではなかったのか?そのために母と共にあえてぎりぎりの生活をしてきたのではなかったのか?母はそれを知っていて、これまでぼくを支えてくれたのではなかったか?このままでいることは母の支援にも背くことになるのではないか?)
土岐の想念はざらついた胸の中を堂々巡りした。土岐は早速、
〈Kakusifile〉
宛てにメールを送信した。
@本日、最終報告書の全文がACIから送信されてきました。草稿段階では、プロジェクトを意図的に黒字にするために設定した前提を付録として章末に添付しましたが、ACIによってすべて削除されました。この前提を報告書に盛り込むことは、現地国鉄の財務副部長の要請でもあったのですが、ACIはそのことを承知で削除したようです。現時点では、プロジェクトを破綻の方向に誘導することは困難な状況です。御指示があれば、返信をお願いします。念のためACI~送信されてきた最終報告書を添付します@
メールを送信してから土岐は考えた。
(これでかりに残額の90万円が入ってこないとしても、別のプロジェクトの財務分析のアルバイトが扶桑総研経由で来年以降期待できるかもしれない。しかし、アペンディクスを削除されたまま、それを甘受することは、自分の現在ある状況を否定することになるのではないか?大学のゼミで2年間、大学院で5年間、客観的で正確なプロジェクト評価を追及することを研究してきたのではなかったか?)
土岐の想念はざらついた胸の中を堂々巡りした。土岐は早速、
〈Kakusifile〉
宛てにメールを送信した。
@本日、最終報告書の全文がACIから送信されてきました。草稿段階では、プロジェクトを意図的に黒字にするために設定した前提を付録として章末に添付しましたが、ACIによってすべて削除されました。この前提を報告書に盛り込むことは、現地国鉄の財務副部長の要請でもあったのですが、ACIはそのことを承知で削除したようです。現時点では、プロジェクトを破綻の方向に誘導することは困難な状況です。御指示があれば、返信をお願いします。念のためACI~送信されてきた最終報告書を添付します@
メールを送信してから土岐は考えた。
(これでかりに残額の90万円が入ってこないとしても、別のプロジェクトの財務分析のアルバイトが扶桑総研経由で来年以降期待できるかもしれない。しかし、アペンディクスを削除されたまま、それを甘受することは、自分の現在ある状況を否定することになるのではないか?大学のゼミで2年間、大学院で5年間、客観的で正確なプロジェクト評価を追及することを研究してきたのではなかったか?)


