の一覧表になっていた。世界のエアポート名と同じ要領で、百近い駅名が3文字のアルファベットの略称になっていて、その正式駅名がアルファベット順に並んでいた。その次のページは裏表紙で、ACIのロゴがプリント・アウトされていた。土岐はもう一度、目次を確認した。土岐が草稿で最後のセクションの資金返済計画の後ろに付論としてつけた、
〈Appendix〉
が消えていた。もう一度、本文の末尾を見てみたが、矢張りアペンディクスは存在しなかった。ACIが意図的に削除したことは明らかだった。そのことに気付いたとき、胸の中をかきむしられるような疾風が渦巻いた。鼓動が早くなり、手首の脈動が隆起と陥没を繰り返しているのが目視できた。事務椅子の上で、上半身が椅子の軋みとともに上下左右に揺れ動くのが自覚できた。やがて、荒くなった呼吸音が耳に聞こえてきた。こめかみの血管が膨張するたびに耳の奥で頭蓋を締め付けた。心臓の鼓動が胸板を叩いている。事務室の明るさが空々しく感じられた。静かな空調音の流れる空気の中をゆっくりと浮揚しているような感覚に囚われた。
(これで九十万円の成功報酬はなくなった。この冬のボーナスが40万円足らずだから、母の白内障の手術は来年の夏のボーナスを待ってからとなる。しかし、来年の4月からは、年俸制になるから、ボーナスはなくなる。母は借金を頑固なまでに嫌がっている。月々の給与を少しずつ貯めれば、夏あたりに手術できるかもしれない。しかし、その間にも白内障は悪化する)
と思いながら、空港に見送りに来たシュトゥーバとその子どもの顔が脈絡もなく脳裏に浮かんだ。
(このままでは、プレゼンテーションの席でシュトゥーバに約束したことを破ったことになる。空港でも念を押された)
しかし、約束を守らないことがどういう意味を持ち、どういう結果をもたらすのか、土岐には想像できなかった。
〈Appendix〉
が消えていた。もう一度、本文の末尾を見てみたが、矢張りアペンディクスは存在しなかった。ACIが意図的に削除したことは明らかだった。そのことに気付いたとき、胸の中をかきむしられるような疾風が渦巻いた。鼓動が早くなり、手首の脈動が隆起と陥没を繰り返しているのが目視できた。事務椅子の上で、上半身が椅子の軋みとともに上下左右に揺れ動くのが自覚できた。やがて、荒くなった呼吸音が耳に聞こえてきた。こめかみの血管が膨張するたびに耳の奥で頭蓋を締め付けた。心臓の鼓動が胸板を叩いている。事務室の明るさが空々しく感じられた。静かな空調音の流れる空気の中をゆっくりと浮揚しているような感覚に囚われた。
(これで九十万円の成功報酬はなくなった。この冬のボーナスが40万円足らずだから、母の白内障の手術は来年の夏のボーナスを待ってからとなる。しかし、来年の4月からは、年俸制になるから、ボーナスはなくなる。母は借金を頑固なまでに嫌がっている。月々の給与を少しずつ貯めれば、夏あたりに手術できるかもしれない。しかし、その間にも白内障は悪化する)
と思いながら、空港に見送りに来たシュトゥーバとその子どもの顔が脈絡もなく脳裏に浮かんだ。
(このままでは、プレゼンテーションの席でシュトゥーバに約束したことを破ったことになる。空港でも念を押された)
しかし、約束を守らないことがどういう意味を持ち、どういう結果をもたらすのか、土岐には想像できなかった。


