「わしはインスリンがないとすぐに死ぬ。足の指を切っているので、南田さんのように裸足でサンダルを履くこともできない。・・・このプロジェクトはおそらくわしの最後のプロジェクトになると思う。コンサルタント人生の総決算だ。あんたはまだ若い。まだまだ先がある。しかし、わしにはもう先がない。そのへんも考えてくれ」
と言いながら、王谷は捲り上げたワイシャツの袖を元に戻した。真偽はともかく、王谷の言いたいことは、腑に落ちないまでも、土岐にはある程度理解できた。
空港に着くと、王谷だけまばらなファースト・クラスのカウンターに向かい、土岐と丸山はエコノミークラスの長蛇の最後尾に並んだ。列の先頭近くに、吉川と山田と高橋がいた。三人とも年甲斐もなく大声ではしゃいでいる。
しばらくすると、見覚えのある褐色の顔が子ども連れでこちらにやってきた。シュトゥーバだった。
「お子さんですか?」
と丸山がすかさず愛想良く聞いて子どもの前にしゃがみこんだ。
「小学校5年生だ」
とシュトゥーバが答える。小学校5年生にしては随分小さく見えたので、土岐は確認するように聞いてみた。
「十一歳ですか?」
「そうだ。来月が誕生日なので、もうすぐ十二歳になる。・・・ミスター・トキは昨夜のパーティーにいなかったようだけど・・・」
「ええ、ちょっと疲れ気味で欠席しました」
「もう、疲れは取れたか?」
「ええ、よく眠れたので・・・」
「プレゼンテーションでの質問の回答はレポートの中に書き込んでもらえるか?」
「・・・ええ・・・」
とすこし戸惑いながら答えた。その戸惑いにシュトゥーバは気付いたようだった。
「最初に言ったが、あることをあるがままに報告して欲しい。あなたの国にとっては数ある援助プログラムのうちの一つかもしれないが、わが国にとっては重要なプロジェクトだ。この子にとっても・・・」
と言いながら、シュトゥーバは男の子と繋いでいた手を高く上げる。子どもはシュトゥーバに引き上げられて、爪先立ちになる。骨に皮が張り付いているようで、手首と肘と膝の関節がやけに大きく見えた。はにかんだような笑顔で土岐と目を合わせて、すぐそらした。
丸山と土岐はチェックインカウンターの前に立った。スーツケースを預け、出国窓口に向かった。セキュリティチェックのカウンターの前でシュトゥーバと別れた。別れ際にシュトゥーバは、
と言いながら、王谷は捲り上げたワイシャツの袖を元に戻した。真偽はともかく、王谷の言いたいことは、腑に落ちないまでも、土岐にはある程度理解できた。
空港に着くと、王谷だけまばらなファースト・クラスのカウンターに向かい、土岐と丸山はエコノミークラスの長蛇の最後尾に並んだ。列の先頭近くに、吉川と山田と高橋がいた。三人とも年甲斐もなく大声ではしゃいでいる。
しばらくすると、見覚えのある褐色の顔が子ども連れでこちらにやってきた。シュトゥーバだった。
「お子さんですか?」
と丸山がすかさず愛想良く聞いて子どもの前にしゃがみこんだ。
「小学校5年生だ」
とシュトゥーバが答える。小学校5年生にしては随分小さく見えたので、土岐は確認するように聞いてみた。
「十一歳ですか?」
「そうだ。来月が誕生日なので、もうすぐ十二歳になる。・・・ミスター・トキは昨夜のパーティーにいなかったようだけど・・・」
「ええ、ちょっと疲れ気味で欠席しました」
「もう、疲れは取れたか?」
「ええ、よく眠れたので・・・」
「プレゼンテーションでの質問の回答はレポートの中に書き込んでもらえるか?」
「・・・ええ・・・」
とすこし戸惑いながら答えた。その戸惑いにシュトゥーバは気付いたようだった。
「最初に言ったが、あることをあるがままに報告して欲しい。あなたの国にとっては数ある援助プログラムのうちの一つかもしれないが、わが国にとっては重要なプロジェクトだ。この子にとっても・・・」
と言いながら、シュトゥーバは男の子と繋いでいた手を高く上げる。子どもはシュトゥーバに引き上げられて、爪先立ちになる。骨に皮が張り付いているようで、手首と肘と膝の関節がやけに大きく見えた。はにかんだような笑顔で土岐と目を合わせて、すぐそらした。
丸山と土岐はチェックインカウンターの前に立った。スーツケースを預け、出国窓口に向かった。セキュリティチェックのカウンターの前でシュトゥーバと別れた。別れ際にシュトゥーバは、


