フィジビリティスタディ

 土岐と丸山と南田の三人で、プロジェクターとスクリーンの片付けを終えると、昼近くになっていた。
 昼食後、割引率を2・5%に引き下げて、プロジェクトの現在価値を黒字に変えた。それに対応して、割引したすべての数表の金額も変更した。その金額を使ってプレゼンテーション資料を作成し終えると三時近くになっていた。丸山は傍らでスライド画面の資料をコピーする作業を手伝ってくれた。他の連中はゆっくりと昼食をとった後、作業所に戻ってきて、土岐と丸山の作業をときどき片目で追いながら、きのうの観光旅行の感想や思い出を語り合っていた。
「さあ、そろそろ行くか」
と王谷が号令をかけた。南田がプロジェクターとスクリーンを置いて、扶桑物産の事務所に帰ってしまったので、その荷物を中年グループの最年少の畠山と川野が持つことになった。プロジェクト・チーム内に暗黙の序列があるようで、畠山も川野も誰かに命じられたわけではなかった。土岐はノートパソコンを抱え、丸山はレジュメのコピーを脇にはさみ、プロジェクターのケーブルを輪に巻いて手にした。
 作業所を出て、国鉄の庁舎に向かうとき、最初から負け戦にもかかわらず、敵地に乗り込むような高揚した気分を土岐は感じていた。プロジェクトのメンバーは土岐以外は発表する予定はないが、予想外の質問が出た場合には、担当者が返答することになっていた。メンバーは戦場に向かう武士団のようで、それなりに心強いものではあったが、土岐にとってはプロジェクトの採算が合うという結論を言わざるを得ない敗北感があった。
 国鉄総裁の部屋は最上階の3階の北隅にあった。二十畳ほどの広さで、中央に畳一枚ほどの大きさの総裁の机があり、書棚がないため、その周囲に赤い紐でくくったおびただしい数の書類の山がうずたかく林立していた。