「ようするに初期投資の融資をその後の売上で返済するわけだけど、融資がODAであれば低利のわけだから、割引率もその利率でいい訳でしょ。国際市場金利である必要はないでしょ」
「すいません。資金返済計画も年次別にキャッシュ・フローの一覧表にしてあるんですが、ODAの低金利を最初から想定していないので、・・・」
と土岐は弁明した。そこで、口を挟んできたのは白蝋のような顔をした山田だった。
「それもそうだねぇ、最初からODAを当て込んで、財務分析するのもねぇ。どうなんだろうね、公的金融機関は、そういう財務分析を見てどう感じるんだろうか。自分たちがまだ、融資を決定していないのに、ODAを見込んでプロジェクトが見積もられているとすれば、権限を干犯されたと不快に思うんじゃ・・・」
それに対して王谷が否定するように顔の前で手のひらを左右に振りながら答えた。
「そんなことはない。公的金融機関は政治的に融資している。確かに、審査はすることはするが、交換公文が取り交わされることが政治的に予定されていれば、審査は形式的なもので、なおざりだ」
会話はそこでひとまず釘が刺された。電気関係のメンバーはこうしたやりとりをまったく理解していないようだった。いずれの表情もうつろだった。さすがに私語はしないが、
「早く終わればいい」
という思いがどの顔からも読み取れた。
この一週間、ひとつひとつ積み上げてきた数字のピラミッドが、王谷が吹きかける風にあおられて崩壊して行くようだった。ひとつひとつに意味を持たせてきた金額のヒエログリフが意味のない絵文字に変換されて行く。その上に砂塵が舞い、砂粒の中に表計算のアルゴリズムが埋没して行く。
しばらくの沈黙が作業所にあった。土岐は、その沈黙を破る義務があるような気がして、丸山に聞いてみた。
「シュトゥーバは出席するんですか?」
「もちろんです」
王谷は金メッキのライターで火をつけてダンヒルを吸いはじめた。土岐は胸につかえるような憤懣のはけ口を求めて質問した。
「財務副部長のシュトゥーバに、割引率のことを聞かれたらどう答えましょうか。プロジェクトの現在価値が黒字になるように決めたとは言えないと思うんですが・・・」
「すいません。資金返済計画も年次別にキャッシュ・フローの一覧表にしてあるんですが、ODAの低金利を最初から想定していないので、・・・」
と土岐は弁明した。そこで、口を挟んできたのは白蝋のような顔をした山田だった。
「それもそうだねぇ、最初からODAを当て込んで、財務分析するのもねぇ。どうなんだろうね、公的金融機関は、そういう財務分析を見てどう感じるんだろうか。自分たちがまだ、融資を決定していないのに、ODAを見込んでプロジェクトが見積もられているとすれば、権限を干犯されたと不快に思うんじゃ・・・」
それに対して王谷が否定するように顔の前で手のひらを左右に振りながら答えた。
「そんなことはない。公的金融機関は政治的に融資している。確かに、審査はすることはするが、交換公文が取り交わされることが政治的に予定されていれば、審査は形式的なもので、なおざりだ」
会話はそこでひとまず釘が刺された。電気関係のメンバーはこうしたやりとりをまったく理解していないようだった。いずれの表情もうつろだった。さすがに私語はしないが、
「早く終わればいい」
という思いがどの顔からも読み取れた。
この一週間、ひとつひとつ積み上げてきた数字のピラミッドが、王谷が吹きかける風にあおられて崩壊して行くようだった。ひとつひとつに意味を持たせてきた金額のヒエログリフが意味のない絵文字に変換されて行く。その上に砂塵が舞い、砂粒の中に表計算のアルゴリズムが埋没して行く。
しばらくの沈黙が作業所にあった。土岐は、その沈黙を破る義務があるような気がして、丸山に聞いてみた。
「シュトゥーバは出席するんですか?」
「もちろんです」
王谷は金メッキのライターで火をつけてダンヒルを吸いはじめた。土岐は胸につかえるような憤懣のはけ口を求めて質問した。
「財務副部長のシュトゥーバに、割引率のことを聞かれたらどう答えましょうか。プロジェクトの現在価値が黒字になるように決めたとは言えないと思うんですが・・・」


