「いい?・・・今日のプレゼンテーションはあくまでも国鉄総裁に対する説明で、青臭い学会での発表とは違うんだ。いまの国鉄総裁は、大統領の親戚というだけの理由で、総裁の椅子に座っているぼんくらで、このプロジェクトで、自分の懐にいくら金が転がり込んでくるかということ以外にはなんの興味もない人間なんだ。細かい説明は要らない。蛇足というもんだ」
王谷のことばのひとつひとつが土岐の神経につき刺さった。腹蔵からむかむかと込み上げてくるものがあったが、じっと堪えた。こめかみをしめつけられるような感覚があった。
「それでは、結論だけでよろしいですか?」
と土岐は感情を抑えてはいたが、声がすこし震えているのが自分でもわかった。
「しろうとにも分かる程度で、・・・へんな質問をされたら、あんたも困るでしょ」
と言う王谷の意見に従うことにした。
「それでは、つづきから・・・」
と言いながら、土岐は丸山がスクリーンの画面を次に進めるのを待った。
「最初に、売上の予測についての説明です。プロジェクトの評価期間を35年として、6年目の電化工事完成年次からあとの30年間に発生する収入を割引率3%で計算すると、収入総額の現在価値は日本円で二千八百五十億円になります。一方、費用の方は、最初の5年間に集中して発生し、6年目からは運営費と維持費だけになり、これも3%の割引率で現在価値に直すと、日本円換算で二千九百億円となります。したがって、プロジェクトの現在価値は五十億円のマイナスとなりますが、消費者余剰を考慮すると、社会会計的にはかなりの黒字になることが期待されます」
腕組みをして王谷の隣で聞いていた吉川が短い足を投げ出して、頓狂な声を出した。
「えっ?それだけ・・・五分も話していないんじゃないの」
「いえ、これはアブストラクトで、全体の要約です」
と土岐はなだめるようにして言った。松山は項垂れて、軽い鼾を洩らしている。他の連中も、丸山を除けば、目は開いてはいるものの抜け殻のようで、静聴はしているが、拝聴しているようには見えなかった。
「まあ、ここにある目次によると、最初に結論を提示して、あとから細部の説明をするわけね」
と王谷がチェーンのついた眼鏡をはずして、手元のレジュメを裸眼で確認している。
「ええ、そのつもりです」
王谷のことばのひとつひとつが土岐の神経につき刺さった。腹蔵からむかむかと込み上げてくるものがあったが、じっと堪えた。こめかみをしめつけられるような感覚があった。
「それでは、結論だけでよろしいですか?」
と土岐は感情を抑えてはいたが、声がすこし震えているのが自分でもわかった。
「しろうとにも分かる程度で、・・・へんな質問をされたら、あんたも困るでしょ」
と言う王谷の意見に従うことにした。
「それでは、つづきから・・・」
と言いながら、土岐は丸山がスクリーンの画面を次に進めるのを待った。
「最初に、売上の予測についての説明です。プロジェクトの評価期間を35年として、6年目の電化工事完成年次からあとの30年間に発生する収入を割引率3%で計算すると、収入総額の現在価値は日本円で二千八百五十億円になります。一方、費用の方は、最初の5年間に集中して発生し、6年目からは運営費と維持費だけになり、これも3%の割引率で現在価値に直すと、日本円換算で二千九百億円となります。したがって、プロジェクトの現在価値は五十億円のマイナスとなりますが、消費者余剰を考慮すると、社会会計的にはかなりの黒字になることが期待されます」
腕組みをして王谷の隣で聞いていた吉川が短い足を投げ出して、頓狂な声を出した。
「えっ?それだけ・・・五分も話していないんじゃないの」
「いえ、これはアブストラクトで、全体の要約です」
と土岐はなだめるようにして言った。松山は項垂れて、軽い鼾を洩らしている。他の連中も、丸山を除けば、目は開いてはいるものの抜け殻のようで、静聴はしているが、拝聴しているようには見えなかった。
「まあ、ここにある目次によると、最初に結論を提示して、あとから細部の説明をするわけね」
と王谷がチェーンのついた眼鏡をはずして、手元のレジュメを裸眼で確認している。
「ええ、そのつもりです」


