フィジビリティスタディ

「うちと南田さんの扶桑物産との間で、ずいぶんと裏金のキャッチボールやロンダリングをやっているようです。一社で裏金をプールすると摘発されるおそれがあるけど、資本関係のない二社の間で取引があったように見せかけて、海外子会社経由でやれば絶対に国税庁に尻尾を捕まれないらしいです。ぼくは手口は良く知らないんですけど・・・」
と言って中途半端に笑いかけてきた。そのうちにホテルに到着した。
 シャワーを浴びてから、土岐は一階ロビーに降り、コンシェルジェのデスクのパソコンを使ってメールを送信した。
 @土岐明調査報告書・現地第5日目、早朝、南田の案内で駅舎を見学しました。乗客予測の上積みを要請されました。作業所で西原からのメモを受け取りました。そのメモでインフレを考慮し、運賃収入を水増しするようにという要求を受けました。昼食を白石と共にし、白石から経費削減努力を盛り込むようにとの強い示唆を受けました。午後は、財務分析レポートを作成しました。なお、今回のプロジェクトの発案者は西原で、プロジェクトにODAが付けば、西原、白石、南田ともにその業績を評価されるようです。商社と大使館の画策したプロジェクトであり、純粋に現地政府が我が国に要請したものとは考えられません。また、プロジェクト・マネージャーの王谷はACIの重役のポストがかかっているようです。さらに、証拠はないがACIと扶桑物産の海外子会社間で脱税により、裏金作りをしている模様です。以上@

九 現地第6日目

 翌日の金曜日、午前10時すぎからプレゼンテーションの予行演習が始まった。南田がプロジェクターとスクリーンを扶桑物産の現地事務所から持って来た。先に帰国し、東欧に飛んだトランスポート・エコノミストの中井を除くコンサルティング・エンジニアリング・サービスのチーム全員と南田が土岐のプレゼンテーションに耳を傾けた。最初に、土岐は断った。
「午後からは英語でやりますが、ここは、日本語でいいですか?」
「いいでしょう。そのほうが間違いがない」
と王谷がスクリーンの一番前の席で腕を組みながら言った。
「それでは、はじめます」
 丸山が作業所の蛍光灯をすべて消した。スクリーンに、
〈THE ELECTRIFICATION OF THE SUBURBAN RAILWAY NETWORK〉