ってバブルの歌だったんですか」
と丸山は心の底から感心したように首をひねって言う。
「言いたいことは、人間は一度、楽をしていい思いをした成功体験をしてしまうと、それが忘れられなくって、それを繰り返して、結局身を滅ぼすということだろうと思うんです。競輪、競馬、競艇、パチンコ、パチスロなんかがそうじゃないですかね。ただ、白秋のすごいところは、そうした個人のバブル崩壊が社会全体に及ぶということを教訓として歌っている点です」
「へぇー、経済も世相も荒廃するということですか・・・」
「いえ、これはわたしの勝手な解釈です」
丸山は突然、何かを思い出したように立ち上がると、
「白石さんと、お昼を一緒にしようかと思うんですが、いいですか?・・・じつはきのう、パーティーの帰り際に白石さんからあなたと昼食をしたいという誘いを受けていたんです。・・・いま、思い出しました。・・・すいません」
といやもおうも言わせないような語勢で言う。白石とは昨夜のパーティーでふた言み言、言葉を交わしたが、他人の情感をまったく忖度せず、傍若無人な言動をとるような印象を抱いた。自分の考えを一方的に押し付けてくる白石のような人間を土岐は好きではないが、
「ええ、構いませんよ」
と答えざるを得なかった。
白石が指定したインド料理店にタクシーで向かった。国鉄の作業所から十分程度のところだった。車の中で、丸山が先刻のシュトゥーバの話したことについて聞いてきた。
「さっき、新中央銀行総裁がシカゴ大学で博士号を取ったって言ってたでしょ。それとインフレとなにか関係があるんですか?」
土岐にとって簡単に説明するのが難しい質問だった。完全に理解していない人間が経済学の素養のない人間にうまく説明できるわけがない。土岐は適当に答えた。
「金利を下げて貨幣供給量を増やせば、景気を良くするという考え方が一方にあるんです。シカゴ大学の連中は、景気の動向はあくまでも実体経済の潜在成長力に依存するから、貨幣供給量だけでは景気は良くならないと考えているんです。実体経済の潜在成長力以上の貨幣供給を増加させると、インフレーションになると主張するのがシカゴ大学を中心とするマネタリストの連中なんです」
「そうすると、新総裁はどうするんですか?」
と丸山は心の底から感心したように首をひねって言う。
「言いたいことは、人間は一度、楽をしていい思いをした成功体験をしてしまうと、それが忘れられなくって、それを繰り返して、結局身を滅ぼすということだろうと思うんです。競輪、競馬、競艇、パチンコ、パチスロなんかがそうじゃないですかね。ただ、白秋のすごいところは、そうした個人のバブル崩壊が社会全体に及ぶということを教訓として歌っている点です」
「へぇー、経済も世相も荒廃するということですか・・・」
「いえ、これはわたしの勝手な解釈です」
丸山は突然、何かを思い出したように立ち上がると、
「白石さんと、お昼を一緒にしようかと思うんですが、いいですか?・・・じつはきのう、パーティーの帰り際に白石さんからあなたと昼食をしたいという誘いを受けていたんです。・・・いま、思い出しました。・・・すいません」
といやもおうも言わせないような語勢で言う。白石とは昨夜のパーティーでふた言み言、言葉を交わしたが、他人の情感をまったく忖度せず、傍若無人な言動をとるような印象を抱いた。自分の考えを一方的に押し付けてくる白石のような人間を土岐は好きではないが、
「ええ、構いませんよ」
と答えざるを得なかった。
白石が指定したインド料理店にタクシーで向かった。国鉄の作業所から十分程度のところだった。車の中で、丸山が先刻のシュトゥーバの話したことについて聞いてきた。
「さっき、新中央銀行総裁がシカゴ大学で博士号を取ったって言ってたでしょ。それとインフレとなにか関係があるんですか?」
土岐にとって簡単に説明するのが難しい質問だった。完全に理解していない人間が経済学の素養のない人間にうまく説明できるわけがない。土岐は適当に答えた。
「金利を下げて貨幣供給量を増やせば、景気を良くするという考え方が一方にあるんです。シカゴ大学の連中は、景気の動向はあくまでも実体経済の潜在成長力に依存するから、貨幣供給量だけでは景気は良くならないと考えているんです。実体経済の潜在成長力以上の貨幣供給を増加させると、インフレーションになると主張するのがシカゴ大学を中心とするマネタリストの連中なんです」
「そうすると、新総裁はどうするんですか?」


