南田の車で国鉄の作業所に着いたのは九時前だった。作業所には丸山しかいなかった。丸山は膨大な領収書を整理し、電卓で集計している最中だった。しばらく、声を掛けるのをためらったが、集計のきりのいいところで彼の方から声を掛けてきた。
「どうでした、駅の様子は?やっぱり、一回ぐらいは見といた方がいいでしょうね。・・・ご覧の通り、他のメンバーは内陸線で観光ツアーに出かけました。あなたは明日の午後、プレゼンテーションをやって、夕方はうちが主催する打ち上げがあって、土曜日には帰国の予定なので、サイトシーイングの時間がとれないですね」
「それでいいんです。金銭的にもそんなゆとりはないんで・・・」
と丸山を労うようにして言ったが、彼には通じなかったようだった。丸山はすぐ話題を変えてきた。
「ところで朝、・・・ついさっきなんですけど、大使館に行く途中で西原さんがここに寄って来て、こんな資料を置いていきました」
と言いながら、英文に数字が羅列しているコピーを差し出した。最初の1枚はこの国のGDP統計だった。ここ十年分の金額が表になっていて、人口統計と一人当たりGDPも記載されていた。GDPの成長率は実質で3%程度で、人口増加率は2%前後だった。かなりのばらつきはあるが、一人当たりGDPの実質成長率は平均で1%程度だった。2枚目はインフレ率の統計資料だった。ここ十年の消費者物価上昇率は年率で10%近かった。ばらつきはあるものの、資源価格の上昇した年には10%を超えていた。統計表の下に金釘流の手書きで、
「運賃計算にインフレを考慮すべし」
と書き込まれていた。さらにその下に初年度を100としたときの物価指数が年率10%の上昇率で三十五年分打ち出されていた。三十五年後には物価指数は3000を超えていた。
資料を読み終えるのを待っていたかのように丸山が話しかけてきた。
「西原さんが、インフレを考慮すれば、このプロジェクトは何の問題もないと言ってました。巨額投資は最初の5年間で、あとの年に運営費と維持費はコンスタントに掛かってくるが、知れている。インフレを運賃計算に組み込むようにとの要請でした」
と言う丸山の要請という文言が土岐の耳にひっかかった。
「どうでした、駅の様子は?やっぱり、一回ぐらいは見といた方がいいでしょうね。・・・ご覧の通り、他のメンバーは内陸線で観光ツアーに出かけました。あなたは明日の午後、プレゼンテーションをやって、夕方はうちが主催する打ち上げがあって、土曜日には帰国の予定なので、サイトシーイングの時間がとれないですね」
「それでいいんです。金銭的にもそんなゆとりはないんで・・・」
と丸山を労うようにして言ったが、彼には通じなかったようだった。丸山はすぐ話題を変えてきた。
「ところで朝、・・・ついさっきなんですけど、大使館に行く途中で西原さんがここに寄って来て、こんな資料を置いていきました」
と言いながら、英文に数字が羅列しているコピーを差し出した。最初の1枚はこの国のGDP統計だった。ここ十年分の金額が表になっていて、人口統計と一人当たりGDPも記載されていた。GDPの成長率は実質で3%程度で、人口増加率は2%前後だった。かなりのばらつきはあるが、一人当たりGDPの実質成長率は平均で1%程度だった。2枚目はインフレ率の統計資料だった。ここ十年の消費者物価上昇率は年率で10%近かった。ばらつきはあるものの、資源価格の上昇した年には10%を超えていた。統計表の下に金釘流の手書きで、
「運賃計算にインフレを考慮すべし」
と書き込まれていた。さらにその下に初年度を100としたときの物価指数が年率10%の上昇率で三十五年分打ち出されていた。三十五年後には物価指数は3000を超えていた。
資料を読み終えるのを待っていたかのように丸山が話しかけてきた。
「西原さんが、インフレを考慮すれば、このプロジェクトは何の問題もないと言ってました。巨額投資は最初の5年間で、あとの年に運営費と維持費はコンスタントに掛かってくるが、知れている。インフレを運賃計算に組み込むようにとの要請でした」
と言う丸山の要請という文言が土岐の耳にひっかかった。


